前回の届出Newsに引き続き、今回もカナダ保健健康製品食品局が、申請された健康食品のヘルスクレームに対して適切な科学的根拠があるとした理由等について、ご紹介させていただきます。

今回は、その中で「飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への置き換えによる血中コレステロールの低下に関する科学的根拠」の科学的根拠部分についてお伝えします。
機能性表示食品の「LDLコレステロールの低下」については【第16回届出News】、アメリカ食品医薬品局ガイダンスの「飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患」については【第41回届出News】、カナダ保健省健康製品食品局の「多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム) とコレステロールの低下に関する科学的根拠」については【第55回届出News】、「大豆タンパク質によるコレステロール値の低下に関する科学的根拠」については【第57回届出News】【第58回届出News】、「粉砕全粒亜麻仁による血中コレステロールの値の低下に関する科学的根拠」については【第59回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への置き換えによる血中コレステロールの低下に関する科学的根拠1)

背景

2009年1月、カナダ保健省健康製品食品局は、飽和脂肪酸から植物油および植物油含有食品中の不飽和脂肪酸への置き換えによる血中コレステロールの低下作用に関するヘルスクレームの申請を受理しました。以下の情報はカナダ保健省が「Guidance Document for Preparing aSubmission for Food Health Claims」2)に基づいて評価し、その要約がまとめられていました。
カナダ保健省は天然の健康食品と通常の食品の分類原則が明確化されたことに基づいて、疾患リスクの低下や治療を謳った食品の分類を再検討しました。販売される食品が通常の食事の一部として利用されることで疾患リスクの低下や治療の利益が得られる場合、その製品は天然の健康食品に分類されず、規制される可能性があるとしています。

本ヘルスクレームに対する科学的根拠について

2002年、全米医学アカデミー (IOM) は、観察研究と臨床研究の両方から得られた結果から「エネルギー、炭水化物、食物繊維、脂質、脂肪酸、コレステロール、タンパク質、アミノ酸の食事摂取基準」を発表しました。この発表では、「一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸に置き換えて摂取することで、血中コレステロール値を低下させ、心疾患の罹患リスクを低下させる」と述べています。カナダ保健省は、2002年のIOMの報告書の時点での最新の文献をエビデンスベースとして受け入れることを決定しました。申請者は、IOMの報告書の知見が現在も有効であることを確認するために、最新の研究レビュー (2000年12月1日~2008年2月1日) を提供しました。この文献レビューはカナダ保健省健康製品食品局によってさらに更新され、最終的に本ヘルスクレームに関連する合計23個の被験食品群を含む17個の研究が科学的根拠の評価に用いられたとしています。

科学的根拠として選定された臨床研究は以下のような特徴を含んでいたと述べています。

  • ① すべての研究は慢性疾患を有さない健常者もしくは高コレステロール血症の者
  • ② 試験参加者は10歳以上75歳以下の男女
  • ③ 試験期間の範囲は2.5~13週間
  • ④ 不飽和脂肪酸に置き換えられた飽和脂肪酸の量は、熱量の約2~20%であった。

飽和脂肪酸の一部を不飽和脂肪酸と置き換えることによる効果について、統計的有意差を考慮しなかった場合、全ての研究で血中の総コレステロール値の低下、96%の研究で低密度リポタンパク質(low density lipoprotein: LDL)-コレステロール値の低下が確認され、統計的な有意差が認められた研究は、総コレステロール値の低下が全研究の82%、LDL-コレステロール値の低下が全研究の83%であったと述べています。本ヘルスクレームに関連する研究におけるコレステロールの低下効果にはばらつきがあり、LDL-コレステロール値の減少率は、脂質1 gを置き換えた場合、約0.4%~2.8%であったとしています。

飽和脂肪酸の代わりに一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、または一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸の組み合わせを使用した研究においては、どの組み合わせで飽和脂肪酸と置き換えたとしてもコレステロール値は低下し、その低下はどの組み合わせでも差はなかったとしています。飽和脂肪酸の代わりに一価不飽和脂肪酸を使用した7個の被験食品群の内の6個、多価不飽和脂肪酸を使用した11個の被験食品群の内の8個、また一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸の両方を均一に使用した5個の被験食品群において、LDL-コレステロール値の統計的に有意な低下が認められたと述べています。

研究レビューでは、総コレステロール値およびLDL-コレステロール値をエンドポイントに設定していました。これらコレステロールは、心疾患の罹患への危険因子またはバイオマーカーとして知られています。飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えることで、冠動脈性心疾患の罹患リスクを低下させるエビデンスは存在しますが、Jakobsenら3)が行った11個のコホート研究のプール分析 (複数の研究の元データを集めて、再解析を行う) では、一価不飽和脂肪酸の摂取は冠動脈性心疾患のリスクと関連していないとも述べています。

カナダ保健省は、最新の研究レビューの結果は、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えることと血中コレステロールの低下に関する2002年のIOMの報告書の結果と一致しており、言い換えれば、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えることで血中コレステロールの低下につながるというヘルスクレームを支持する科学的証拠が存在すると結論づけています。カナダの人口の多く (約44%) が高脂血症であることを考えると、このヘルスクレームはカナダの人口に関連し、一般的に適用可能であるとしています。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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