前回の届出Newsに引き続き、今回もカナダ保健健康製品食品局が、申請された健康食品のヘルスクレームに対して適切な科学的根拠があるとした理由等について、ご紹介させていただきます。
今回は、その中で「粉砕全粒亜麻仁による血中コレステロールの値の低下に関する科学的根拠」についてお伝えします。

機能性表示食品のLDLコレステロールの低下については【第16回届出News】、飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患については【第41回届出News】、大豆タンパク質と冠動脈性心疾患については【第50回届出News】、多糖類複合体によるコレステロール値の低下に関する科学的根拠については【第55回届出News】、大豆タンパク質によるコレステロール値の低下に関する科学的根拠については【第57回届出News】【第58回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●粉砕全粒亜麻仁による血中コレステロール値の低下に関する科学的根拠1)

背景

2012年3月、カナダ保健省健康製品食品局は、粉砕亜麻仁と血中コレステロール値の低下に関するヘルスクレームの申請を受理しました。以下の情報はカナダ保健省が「Guidance Document for Preparing a Submission for Food Health Claims」2)に基づいて評価し、その要約がまとめられていました。

本ヘルスクレームに対する科学的根拠について

本ヘルスクレームの申請者は、2011年5月までに報告された研究の文献レビューを行っていました。追加でカナダ保健省健康製品食品局によって2013年6月までに報告された研究の調査を実施しています。

科学的根拠として選定された臨床研究は以下のような特徴を含んでいたと述べています。

  • ①すべての研究は健常者もしくは高コレステロール血症の者
  • ②試験参加者は8歳以上75歳以下の男女
  • ③試験期間の範囲は4週間から12ヶ月
  • ④粉砕亜麻仁の摂取量は30 g/日から50 g/日
  • ⑤全粒種子25 g/日に相当する部分脱脂亜麻仁食を用いた試験を除き、すべての研究で粉砕亜麻仁を使用
  • ⑥最も規模が小さい研究の症例数は10人であり、最も規模が大きい研究の症例数は179人
  • ⑦設定されたアウトカムは心血管疾患の危険因子やバイオマーカーとして認識されている血中の総コレステロール値および低密度リポタンパク質 (LDL: low density lipoprotein) コレステロール値

すべての研究において、亜麻仁の摂取によって血中の総コレステロール値およびLDLコレステロール値の低下が確認され、高い一貫性があったと述べています。一方で、総コレステロール値に関して統計的に有意な低下が確認された研究は全体の25%のみであり、LDLコレステロール値に関しては統計的に有意な低下を認めた研究はなかったとしています。これらの結果は質が高い研究に限定したときも類似した結果が得られると述べています。

カナダ保健省健康製品食品局は、申請者が行ったメタアナリシスを再現し、申請者のメタアナリシスに含まれていない研究を加えた新たなメタアナリシスを実施しました。その結果、2つのメタアナリシスで得られた統合推定値は類似していたと述べています。カナダ保健省健康製品食品局のメタアナリシスにおける推定値はシステマティックレビューの一部として同定されていた全8個の研究が含まれており、それによると、変化量が記載されていない研究については、被験食品群およびプラセボ群の最終的な値を各研究から抽出し、変化量を計算したと述べています。
総コレステロール値とLDLコレステロール値の統合効果は、それぞれ0.21 mmol/L、0.22 mmol/Lであり、どちらも統計的に有意な低下であったとしています。

成人を対象とした質が高い研究における粉砕全粒亜麻仁の1日の摂取量の範囲は38 gから40 gであり、メタアナリシスにおいて最も重要視された研究 (最も被験者が多く、分散が小さい) においても、全粒亜麻仁の1日の摂取量は40 gであったと述べています。

以上の科学的根拠を踏まえ、粉砕亜麻仁の摂取による総コレステロール値およびLDLコレステロール値の低下作用を一貫して支持していたと述べています。粉砕亜麻仁の摂取によって総コレステロール値およびLDLコレステロール値が統計的に有意な低下作用を認めた研究は少なかった一方で、メタアナリシスにおいては統計的に有意な低下作用を認めたとしています。

カナダ保健省は粉砕全粒亜麻仁の摂取によるコレステロール値の低下は一貫性が高く、ヘルスクレームを支持する科学的根拠が存在すると結論付けております。
2009年から2011年における6歳から79歳のカナダ人の約39%の総コレステロール値が5.2 mmol/L以上 (成人において不健康とされる値) であることを考慮すると、本ヘルスクレームはカナダ人に関連し、適応可能であるとしております。

ヘルスクレームの記載について

以下には、ヘルスクレームの記載方法、表示方法などの例を記載しました。

1.主要な記載

●記載例

粉砕亜麻仁16 gはコレステロール値の低下に役立つことが示されている粉砕亜麻仁の1日の摂取量の40%に相当します。

主要な記載で言及される「1日あたりの量」は、粉砕全粒亜麻仁40 gであり、この量は前述したコレステロール値の低下に寄与する量です。この表記では、1食分の粉砕全粒亜麻仁の1日の摂取量に対する割合は、5%ごとに記載を行い、それに合わせた数値の切り上げまたは切り下げをおこなうこととしています。

2.追加の記載

  • ●粉砕 (全粒) 亜麻仁はコレステロール値の低下に役立ちます
  • ●高値のコレステロールは、心血管疾患の危険因子です。
  • ●粉砕 (全粒) 亜麻仁は心疾患の危険因子であるコレステロール値の低下に役立ちます。

上記の追加の記載は、主要な記載の2倍までの大きさと、目立つ文字で主要な記載の隣に記載することができるとしています。

ヘルスクレームを有する食品としての状態

下記の基準が本ヘルスクレームを有するすべての食品に適応されるとしております。

  • a.以下の分量あたり、13 g以上の粉砕全粒亜麻仁を含有する。
    • i.基準量および記載サイズの1食分
    • ii.食品が粉砕全粒亜麻仁、全粒亜麻仁、もしくは包装食品である場合は、記載サイズの1食分
  • b.以下の分量あたり、ビタミンかミネラル栄養物の推奨栄養摂取重量の少なくとも10%を含有する。
    • i.基準量および記載サイズの1食分
    • ii.食品が包装食品の場合は、記載サイズの1食分
  • c.アルコール含有量が0.5%以下である。
  • d.ナトリウムの含有量が以下の基準を満たす。
    • i.基準量および記載サイズの1食あたり、480 mg未満 (基準量が30 gまたは30 mL以下の場合は50gあたり480 mg未満)。
    • ii.食品が包装食品の場合、記載サイズの1食あたり960 mg未満。
  • e.「飽和脂肪酸を含まない」または「飽和脂肪酸が少ない」という基準を満たしている。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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