食生活の欧米化から、近年は飽和脂肪酸の摂取量が増加しています。飽和脂肪酸の取りすぎは、血中のLDLコレステロールを増加させるため、動脈硬化などの冠動脈疾患へのリスクが高くなります。そのため、LDLコレステロールを低下させるとうたった機能性表示食品が販売されています。そこで、今回は「LDLコレステロールの低下」に関する届出について情報をお伝えします。

対象者の選定基準

現在、機能性表示食品の最終製品を用いた臨床試験の実施は、原則として、「特定保健用食品の表示許可等について」の別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」1) (以下、別添2) に示された特定保健用食品の試験方法 (規格基準型、疾病リスク低減表示及び条件付き特定保健用食品に係る試験方法を除く) に準拠することとされています。別添2では、コレステロールに関する試験対象者の基準値を以下のように定めています。

境界域: LDLコレステロール120~139 mg/dL
軽症域: LDLコレステロール140~159 mg/dL

試験対象者は原則として、疾病に罹患していない健常者を選定することが定められていますが、別添2に示された範囲内に限り、例外的に軽症者が含まれたデータの使用についても認められています2)。そのため半数の届出では、試験対象者の選定時に疾病に罹患していない方のみを対象としており、LDLコレステロールが正常値 (140mg/dL未満) であることを選定基準とした一方で、その他の届出では軽症域も含めた基準を設けていました (表1)。

しかし、本ヘルスクレームでは、届出の根拠となる先行研究のほとんどが、別添2が発出 (平成26年) されるより前に倫理審査委員会による承認を受けたものであるため、別添2に示された試験方法に準拠していないことになります。この場合は、別添2発出前の特定保健用食品に係る従前の通知 (平成17年2月1日食安新発第0201002号) 3) に準拠していればよいとされています2)。従前の通知では、コレステロールに関する試験の対象者は原則として、「総コレステロールについては200~240 mg/dL、LDLコレステロールについては120~160 mg/dLとする」と定められていました。

届出の根拠となった先行研究は上記の従前の通知に準拠していますが、新通知である別添2に示された対象者の基準とは必ずしも一致していないため、本ヘルスクレームでは、先行研究の既存データをもとに、新たに別添2に準拠した対象者による層別解析を行いて評価した届出論文が多くありました。これらの論文の中では、再度臨床試験を行わなかった理由について、「被験者の負担となるため、既存データにより再評価できることは、倫理的な面から望ましい」としていました。

機能性評価指標

別添2によると、評価方法は原則として、「LDLコレステロールとする。総コレステロールは参考データとする」と定めています。本ヘルスクレームでは全ての届出においてLDLコレステロールを機能性評価指標としていましたが、総コレステロールを併せて評価した届出もありました。

関与成分

最終製品を用いて届出をしている製品は松樹皮由来プロシアニジン、セサミン、セサモリン及びアリインを関与成分として表示していました (表1)。今回は、本ヘルスクレームで最も使用された関与成分であるプロシアニジンについてご紹介します。

プロシアニジン

食事から摂取したコレステロールは、中性脂肪が分解して生成されたモノグリセリドと胆汁酸からなる混合ミセルのはたらきにより、体内に吸収されます。したがって、腸管内での胆汁酸の吸着および排泄を促進することで、コレステロールの低下につながると考えられます。プロシアニジンを含む果実細胞壁成分の胆汁酸吸着活性を調べた先行研究4) では、プロシアニジンによる胆汁酸の強い吸着作用

が認められています。また、プロシアニジンを含む松樹皮抽出物を投与したラットにおいて、糞便中へのコレステロールおよび胆汁酸の排出が促進されたことも分かっています5)。このことから、プロシアニジンのLDLコレステロールの低下作用が期待されています。
弊社では、対象者の選定や評価方法に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様に満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

表1. 『LDLコレステロールの低下』 届出製品の臨床試験に関する学術論文の試験概要一覧

【参考文献】
  • 1)消費者庁. 「特定保健用食品の表示許可等について」(令和2年4月1日付け消食表第109号): 別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」. 2019. p. 1–26.
  • 2)消費者庁. 機能性表示食品の届出等に関するガイドライン (平成27年3月30日付け消食表第141号). 改正令和2年4月1日 (消食表第123号). 2019. p. 26–7.
  • 3)消費者庁. 特定保健用食品の審査申請における添付資料作成上の留意事項について. 2005.
  • 4)池口ら, 松樹皮抽出物がラットの脂質代謝に及ぼす影響. 日栄・食糧会誌. 2006;59 (2):89–95.
  • 5)水野ら, 数種果実の細胞壁構成成分の特徴と食品機能性. 園学研. 2010;9 (1):113–20.
  • 6)草場ら, 松樹皮抽出物含有錠剤の摂取がヒト血清脂質 (LDL-コレステロール) に及ぼす影響 (無作為化二重盲検プラセボ対照群間並行試験). 応用薬理. 2015;89(3/4):69–73.
  • 7)浜ら, 特にLDLコレステロールが140 mg/dL未満の健常人に限定した統計解析による松樹皮抽出物含有錠剤摂取が血清脂質 (LDLコレステロール) に及ぼす影響 (無作為化二重盲検プラセボ対照群間並行試験). 応用薬理. 2017;93(1/2):7–11.
  • 8)関ら, セサミンおよびセサモリンを含む純正ごま油摂取によるLDLコレステロール値の低減効果に関する研究 ―健常者における検討のための層別解析―. 薬理と治療. 2019;47 (11):1929–35.
  • 9)鈴木ら, ヒトの血中LDLコレステロールに対するにんにく卵黄含油サプリメント摂取の効果 ―ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較―. 薬理と治療. 2016;44 (11):1645–53.

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