前回の届出Newsに引き続き、今回もアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administra-tion; FDA) が発行するガイダンスについてご紹介します。今回は、「コレステロールと冠動脈性心疾患」についてお伝えします。『コレステロール値の改善』に関する最終製品の届出については、【第16回届出News】、『心血管に対する機能性評価』に関する欧州食品安全機関のガイダンスについては、【第37回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●FDAガイダンス

~飽和脂肪酸とコレステロールと心血管疾患~1)

a) 飽和脂肪酸とコレステロールと冠動脈性心疾患の関係について

心血管疾患とは、心臓と循環器系の疾患を意味します。冠動脈性心疾患は、心血管疾患の中でも最も深刻な疾患であり、心筋とそれを支える血管の疾患を指します。血中の総コレステロール値と低密度リポタンパク質 (Low Density Lipoprotein; LDL) コレステロール値が高値を示す時、冠動脈性心疾患の発症リスクが高いと述べています。
冠動脈性心疾患の発症リスクが高まるのは、血中総コレステロール値が240 mg/dL (6.21 mmol/L) 以上または、LDL-コレステロール値が160 mg/dL (4.13 mmol/L) 以上の者と述べています。またアメリカでは、血中総コレステロール値の境界域は、200~239 mg/dL (5.17~6.18 mmol/L)、LDL-コレステロール値は130~159 mg/dL (3.36~4.11 mmol/L) となっています。
食事中の脂肪 (脂質) には、脂肪酸とコレステロールがあります。一般的に脂肪酸は、飽和脂肪酸 (二重結合を持たない脂肪酸) と、一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸 (二重結合を1つ以上持つ脂肪酸) で構成されています。
飽和脂肪酸とコレステロールを多く含む食事は、血中の総コレステロール値とLDLコレステロール値を上昇させ、その結果、冠動脈性心疾患のリスクを高めることが報告されています。一方、飽和脂肪酸やコレステロールの少ない食事は、血中の総コレステロール値やLDLコレステロール値を低下させ、その結果、冠動脈性心疾患の発症リスクを低下させることが分かっています。

b) 冠動脈性心疾患と飽和脂肪酸・コレステロール低減の意義

冠動脈性心疾患は、他の疾患よりも死亡者数が多いことから、アメリカにおいて大きな問題とされています。そのため、冠動脈性心疾患の危険因子を早期に治療することは、この問題を解決する方法の1つであるとしています。
冠動脈性心疾患による死亡リスクは、血中LDL-コレステロール値の上昇に伴って連続的に増加します。血中LDL-コレステロール値が高い人は冠動脈性心疾患のリスクが高く、コレステロール値が中程度の人でも、冠動脈性心疾患のリスクは高まることが分かっています。研究によると、飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量を減らすことで、血中LDL-コレステロール値が下がり、心血管疾患のリスクが下がることがわかっています。また、血中コレステロール値が正常範囲にある人でも、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量を減らすことで、心血管疾患のリスクが減少するということも分かっています。
冠動脈性心疾患のその他の危険因子としては、心血管疾患の家族歴、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満 {体重が理想体重 (身長に対して最も健康リスクが低い体重) より30%以上多い}、運動不足などが挙げられます。
アメリカでは、多くの人が飽和脂肪酸の摂取量が推奨値を超えていることが問題になっており、コレステロールの摂取量も、平均して推奨レベルか、またはそれ以上とされています。冠動脈性心疾患のリスクに関する主要な推奨事項の1つは、1日に摂取する熱量のうち、10%未満を飽和脂肪酸から摂取し、脂肪からの熱量摂取分を平均30%以下にすることであるとしています。また、コレステロールの推奨摂取量は、1日あたり300 mg以下にすることも挙げています。

c) 飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患との関係を謳ったヘルスクレームの要件

商品を販売する際は、連邦規則集21巻
§101.142)に定められた要件 (機能性関与成分を含む食品成分の表示の方法、機能性関与成分の適格性および有効性・安全性の表示方法等) を満たすことが求められています。
また、食品のラベルまたは表示については、以下のような内容を踏まえて、記載することが必要であると述べています。

  • ①ヘルスクレームでは、飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食品は、心血管疾患へのリスクを低減させる「可能性がある」または「かもしれない」としていること。
  • ②ヘルスクレームでは、疾患を特定する際に、「心血管疾患」または「冠動脈性心疾患」の用語を使用していること。
  • ③栄養素を特定する際に、「飽和脂肪酸」または「コレステロール」という用語を両方とも使用していること。
  • ④ヘルスクレームでは、飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食事に起因した、冠動脈性心疾患のリスク低減の程度を説明していないこと。
  • ⑥飽和脂肪酸とコレステロールの過剰摂取だけでなく、冠動脈性心疾患の発症は多くの要因に左右されることが表示されていること。

本ヘルスクレームを謳ううえで、商品を販売する際は、連邦規則集21巻§101.623)
に定められた「低飽和脂肪酸」「低コレステロール」食品に関する要件を満たすことが求められています。「低飽和脂肪酸」食品とは、対象となる食品の通常摂取量に含まれる飽和脂肪酸が1 g以下であり、飽和脂肪酸からの熱量が全熱量の15%以下である時を指すと述べられています。また、「低コレステロール」食品とは、対象となる食品の通常摂取量が30 g以上で、そこに含まれる脂質が13 g以下であり、通常摂取量に含まれるコレステロールが20 mg以下の時を指すと述べられています。ただし、魚およびジビエなどの狩猟肉は、連邦規則集21巻§101.62の「Extra Lean」の要件 (通常摂取量を100 gとした時、脂質が10 g以下、飽和脂肪が4.5 g以下、コレステロールが95 mg以下) を満たすとしています。

d) 飽和脂肪酸とコレステロールと冠動脈性心疾患との関係を謳ったヘルスクレームを謳う際の任意の情報記載

ヘルスクレームには、飽和脂肪酸およびコレステロールに加えて、冠動脈性心疾患の家族歴、血中総コレステロールおよびLDL-コレステロールの上昇、体重過多、高血圧、喫煙、糖尿病、身体活動の低下も危険因子であるとすることが記載できるとしています。
飽和脂肪酸やコレステロールによる心血管疾患との関連をヘルスクレームに記載する際は、「血中コレステロール」、「血中総コレステロール」、「LDL-コレステロール」などの成分を介している旨を記載できると述べています。

先述のa)および b)の情報のうち、飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患との関係やその重要性をまとめたものを含めて、ヘルスクレームに記載することが出来るとしています。

栄養素を特定する際は、飽和脂肪酸とコレステロールに加えて、「脂質」という用語を用いることが出来るとしています。

ヘルスクレームは、アメリカ国内の冠動脈性心疾患の患者数に関する情報を含めて記載することが出来るとしていますが、この情報の出所を明らかにされなければならず、農務省 (U.S. Depart-ment of Agriculture; USDA) 及び保健福祉省 (Department of Health and Human Services; HHS) が発行する「Dietary Guide-lines for Americans」、国立衛生統計センター (National Center for Health Statistics; NCHS)、国立衛生研究所 (National Institu-tes of Health; NIH) からの最新の情報でなければならないとしています。

ヘルスクレームは、USDAおよびHHSが発行する「Dietary Guidelines for Americans」に準拠していることが求められています。

本ヘルスクレームを謳った食品を販売する際のラベルには、血中総コレステロール値またはLDLコレステロール値が高い者は、医師に相談し、治療を受けるべきであることを表示しても良いとしています。また、血中総コレステロール値、LDL-コレステロール値が高値、または血中コレステロールが高い者は、医師に相談し、治療を受けるべきであることをラベルに表示する必要があると記載されています。

最後に、本ヘルスクレームを謳った食品のラベルや表示の例がまとめられていました。

  • 多くの要因によって、心血管疾患への発症に影響を与えるが、飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食事であれば、心血管疾患への発症リスクは低減する可能性がある。
  • 心血管疾患の発症は、多くの要因に左右されるが、そのリスクは飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食事と健康的な生活習慣によって軽減する可能性がある。
  • 心血管疾患の発症は、家族歴、血中LDL-コレステロール値の高さ、糖尿病、高血圧、過体重、喫煙、運動不足、食事パターンなど、多くの要因に左右される。健康的なライフスタイルの一環として、飽和脂肪酸、脂質、コレステロールの少ない健康的な食事を摂ることで、血中コレステロール値を下げ、心血管疾患のリスクを軽減する可能性がある。
  • 心血管疾患の発症には、家族歴、血中およびLDL-コレステロール値の上昇、高血圧、喫煙、糖尿病、過体重など、多くの要因が関係している。飽和脂肪酸、コレステロール、脂質の少ない食事は、心血管疾患のリスクを低減するのに有効である。
  • 飽和脂肪酸、コレステロール、脂質の少ない食事は、心血管疾患のリスクを低減する可能性がある。心血管疾患は、食生活、家族歴、血中LDL-コレステロール値の上昇、運動不足など、さまざまな要因に左右される。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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