前回の届け出Newsに引き続き、今回もカナダ保健健康製品食品局が、申請された健康食品のヘルスクレームに対して適切な科学的根拠があるとした理由等について、ご紹介させていただきます。 今回は、その中で「多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム) と血中コレステロールの低下」についてお伝えします。機能性表示食品の「コレステロール値を改善する」に関する最終製品の届出については【第16回届出News】、『飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患』に関するアメリカ食品医薬品局ガイドラインについては、【第41回届出News: 飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム) と血中コレステロールの低下に関する科学的根拠について1)

背景

2013年4月、カナダ保健省健康製品食品局は、多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム) が血中コレステロール低下に関するヘルスクレームの申請を受理しました。カナダ保健省では「Guidance Document for Preparing a Submission for Food Health Claims」2)など、健康食品の販売を支援するためのガイダンスを発刊しており、多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム) が血中コレステロール低下に関するヘルスクレームの科学的根拠の妥当性は、上記のガイダンスを基に評価したと述べています。

本ヘルスクレームに対する科学的根拠について

本ヘルスクレームの対象となった食品は、PGX® (PolyGlycopleX®) という商品 {水溶性多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム)} です。PGX®は、カナダ保健省が食物繊維を含む食品に対しての定義や分析方法等をまとめた「Policy for Labelling and Advertising of Dietary Fibre-Containing Food Products」3)に基づいた商品であると述べています。

PGX®の申請者は、2008年から2013年までに報告された研究の文献レビューを行っていました。追加でカナダ保健省健康製品食品局によって2014年までに報告された研究の調査を実施しています。

その調査から3つの既に公開された研究と申請者が全文を提供した1つの未公開の研究を含む、合計4つの研究が科学的根拠として該当したと述べています。

科学的根拠として研究は以下のような条件で実施されていました。

  • ① 18~68歳の正常および高コレステロール血症の男女を対象とした。
  • ② ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験で実施された。
  • ③ フランス、日本、オーストラリアで行われた
  • ④ 試験参加者の数は、54~84名であった。
  • ⑤ 試験期間は、2週間から12カ月間で実施された。
  • ⑥ PGX®の摂取量は1日あたり10~15 gであった。

科学的根拠としている4つの研究のうち3つは、朝食時にシリアルにPGX®をあらかじめ混ぜておき、プレーンヨーグルトと組みあわせて摂取させていました。また、残りの1つの研究は、水にPGX®を混ぜ、主食を摂取する5~10分前に摂取させる方法をとっていました。また、プラセボ食品は、スキムミルク粉末、イヌリン粉末、米粉でした。

科学的根拠とした研究の主要アウトカムは、被験食品群とプラセボ群間の総コレステロールと低密度リポタンパク質 (low-density lipoprotein; LDL) コレステロール値の変化としていました。副次的アウトカムは、高密度リポタンパク質 (high-density lipoprotein; HDL) コレステロール値の変化としていました。
科学的根拠としたすべての研究で、PGX®を摂取させることで、総コレステロール値、LDLコレステロール値が低下することが報告されています。また、総コレステロール値は3つの研究で、LDLコレステロール値はすべての研究で統計的に有意に低下したと述べています。さらに、本ヘルスクレームの科学的根拠として使用された研究は「Guidance Document for Preparing a Submission for Food Health Claims2)」を参照して試験を実施していたため、研究の質が担保されていただと述べています。
一方、副次的アウトカムであるHDLコレステロール値については、半分の研究でHDLコレステロール値が上昇したが、他の研究では上昇は見られなかったと述べています。さらに、HDLコレステロール値の増加する結果を得た研究でも、統計的に有意ではなかったとしています。

少なくとも2週間摂取したとき統計学的に有意なコレステロール低下作用が認められた1日あたり10 gがPGXの有効性を示す最小の摂取量であったと結論づけています。

PGX®の摂取による総コレステロール値およびLDLコレステロール値の低下は、それぞれ0.20~0.37 mmol/L (4.0%~7.5%) であり、0.25~0.46mmol/L (8.0~14.6%) であったと述べています。

PGX®を、調理 (焼く、煮るなど) または冷凍などの過程が必要となる食品に添加した場合、コレステロール低下作用を示す根拠はないとしています。そのため、PGX®は摂取する直前に添加 (振りかける、混ぜるなど) する食品と一緒に販売される場合、またはPGX®が消費の直前に液体が添加される乾燥食品と混ぜて販売される場合にのみ、このヘルスクレームを謳うことができるとしています。

以上より、カナダ保健省はPGX®による血中コレステロール値の低下作用は一貫性が高く、ヘルスクレームをサポートする科学的根拠が存在すると結論付けています。

2012年から2013年における18歳から79歳のカナダ人の19%のLDLコレステロール値が3.5 mml/L以上 (血中LDLコレステロール値が3.5 mml/L以上である場合、健康的ではないLDLコレステロール値であるとされています4)。) であったことを考慮すると、本ヘルクレームはカナダ人に関連し、適応可能であると述べています。

ヘルスクレームの記載について

下記の基準が本ヘルスクレームを有するすべての食品に適応されるとしています。

  • a. PGX®を少なくとも3.3 g含有すること (以下のどちらかのうち)。
    • i. 基準量および規定サイズの1食分あたり
    • ii. 食品が包装食品、栄養補助食品または食事の代替品である場合は、記載されたサイズの1食分あたり
  • b. ビタミンかミネラル栄養物の推奨栄養摂取重量の少なくとも10%を含む (以下のどちらかのうち) こと。
    • i. 基準量および規定サイズの1食分あたり
    • ii. 食品が包装食品、栄養補助食品または食事の代替品である場合は、記載されたサイズの1食分あたり
  • c. アルコール含有が0.5%以下であること。
  • d. 以下のどれかを含むこと。
    • i. 基準量および記載サイズの1食あたりのナトリウムの1日量の15%未満 (基準量が30gまたは30mL以下の場合は50gあたりのナトリウムの1日量の15%未満)
    • ii. 栄養補助食品か食事の代替品である場合、記載サイズの1食あたりのナトリウムの1日量の15%未満
    • iii. 包装食品である場合は、記載サイズの1食あたりのナトリウムの1日量の25%未満
  • e. 「飽和脂肪酸を含有しない」または「飽和脂肪酸が少ない」こと。

ラベルには上述に加えてPGX®を混ぜたり振りかけたりする際の使用方法や、水の飲み方を含むことが望まれるとしています。

広告表示とラベルについて

PGX®が「多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム) 」という一般名を指すことが明確である場合にのみ、食品パッケージの前面 (または包装の他の場所) でPGX®に関する主張を行うことができるとしています。その場合、成分表や主要な表示パネルに記載する必要があると述べています。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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