前回の届出Newsに引き続き、今回もカナダ保健健康製品食品局が、申請された健康食品のヘルスクレームに対して適切な科学的根拠があるとした理由等について、ご紹介させていただきます。

今回は、その中で「オーツムギ食物繊維による血中コレステロールの低下に関する科学的根拠」についてお伝えします。
機能性表示食品の「LDLコレステロールの低下」については【第16回届出News】、アメリカ食品医薬品局ガイダンスの「飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患」については【第41回届出News】、カナダ保健省健康製品食品局の「多糖類複合体 (グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム) とコレステロールの低下に関する科学的根拠」については【第55回届出News】、「大豆タンパク質によるコレステロール値の低下に関する科学的根拠」については【第57回届出News】【第58回届出News】、「粉砕全粒亜麻仁による血中コレステロールの値の低下に関する科学的根拠」については【第59回届出News】、「飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への置き換えによる血中コレステロールの低下に関する科学的根拠」については【第61回届出News】【第62回届出News】、「大麦製品による血中コレステロールの低下に関する科学的根拠」については【第63回届出News】、にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。「オオバコ食物繊維による血中コレステロールの低下に関する科学的根拠」については【第64回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●オーツムギ食物繊維による血中コレステロールの低下に関する科学的根拠1)

背景

2007年1月、カナダ保健省健康製品食品局は、オーツムギに対して疾患リスク低減のヘルスクレームを使用する許可申請を受け付けました。このヘルスクレームにはオーツムギ食物繊維 (β-グルカン) の摂取と血中コレステロールの低下による心疾患リスクの低下とのつながりが明記されていました。以下の情報はカナダ保健省が「Guidance Document for Preparing a Submission for Food Health Claims」2)に基づいて評価し、その要約がまとめられていました。
カナダ保健省は天然の健康食品と通常の食品の分類原則が明確化されたことに基づいて、疾患リスクの低減や治療を謳った食品の分類を再検討しました。販売される食品が通常の食事の一部として利用されることで疾患リスクの低減や治療の利益が得られる場合、その製品は天然の健康食品に分類されず、規制される可能性があるとしています。

1. オーツムギ食物繊維 (β-グルカン) の適格な供給源

本決定文書の目的のために、カナダ保健省はオーツ麦食物繊維 (β-グルカン) の適格な供給源を、オーツムギブラン、押し麦 (オートミールとも呼ばれる)、およびオーツムギ全粒粉としたと述べています。これらの供給源に関して、仕様は以下のように記載されていました。

  • ●オーツムギブラン: オーツムギブランは、挽き割りオーツムギまたは押し麦を粉砕し、得られたオーツムギ全粒粉を適切な方法で分別して製造される。オーツムギブランは、元原料の50%以下であり、可溶性食物繊維 (β-グルカン) が少なくとも5.5% {乾燥重量基準 (dry weight basis: dwb)}、総食物繊維が少なくとも16% (dwb) であり、総食物繊維の少なくとも3分の1が可溶性食物繊維であることとされています。
  • ●押し麦: オートミールとして知られる押し麦は、完全に脱皮した挽き割りオーツムギのを原料に、蒸し焼き、裁断、圧延、フレーク状に加工したもので、β-グルカンの可溶性食物繊維を少なくとも4% (dwb)、総食物繊維を少なくとも10% (dwb) 含んでいます。
  • ●オーツムギ全粒粉: オーツムギ全粒粉は、完全に脱皮した挽き割りオーツムギを蒸して粉砕することにより製造される。オーツムギ全粒粉はオーツムギブランの著しい損失がなく、可溶性食物繊維 (β-グルカン) を少なくとも4% (dwb)、総食物繊維を少なくとも10% (dwb) 含むとしています。

2. 本ヘルスクレームに対する科学的根拠について

申請者が提出した本ヘルスクレームの根拠には、1995年にアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration: FDA) に提出されたオーツムギと冠状動脈性心疾患に関するヘルスクレームの請願書が含まれていたとしています。このヘルスクレームは、1997年1月のFDAの最終規則で承認されました。さらに、トロント大学のPFSNAR (Program in Food Safety, Nutrition and Regulatory Affairs) が作成した、1995年から2006年までに発表された文献のシステマティックレビューを提出したとしています。PFSNRAのレビューでは、オーツムギ食物繊維 β-グルカン) の血中コレステロール低下作用を検証した36個の臨床試験が含まれていたと述べていいます。栄養表示教育法に基づいてFDAが承認した他のヘルスクレームと同様に、カナダ保健省は、1997年に米国で承認された時点からの文献の更新を行うことと定めていますが、その際、関係性を検討するための体系的なアプローチを提出書類の一部として提供することを求めているとしています。

これらの研究のエンドポイントは、心疾患の危険因子もしくはバイオマーカーとして知られている低密度リポタンパク質 (low density protein: LDL)-コレステロールや総コレステロールであったとしています。

FDAへの請願書 (1995年) で提供された情報に基づくと、用量反応研究の回帰分析では、オーツムギ食物繊維 (β-グルカン) の約3 gの摂取によって、総コレステロールとLDL-コレステロールをそれぞれ約5%と8%低下させることが確認されています。PFSNRAの文献レビュー (2006年) では、用量反応性は観察されなかったが、ほとんどの研究が中等度から高度の高コレステロール血症の被験者で実施されており、3 gのβ-グルカンの摂取によってLDL-コレステロールの減少 (β-グルカン、1 g当たりのLDL-コレステロールの減少範囲は0.15%から4%であった) をもたらしたと述べています。また、PFSNARのレビューにおいては、FDAが本ヘルスクレームを受理した根拠に反する証拠が確認されなかったとしています。

カナダ保健省は、オーツムギ食物繊維 (β-グルカン) の摂取と血中コレステロールの低下との関連性を示すヘルスクレームを支持する科学的証拠が存在すると結論づけました。カナダの人口の多く (44~69%)が高脂血症であり、血中コレステロール濃度が正常または軽度に上昇している成人もオーツムギの摂取量を増やすことで恩恵を受けることができることを考慮すると、本ヘルスクレームはカナダ人に関連し、適応可能であるとしています。

科学的根拠、申請者、および他の管轄での決定に基づくと、ヘルスクレーム持つ食品としての特定の条件を満たしたとき、オーツムギ製品におけるヘルスクレームが実証されるということがカナダ保健省の見解であると述べています。

ヘルスクレームの記載について

以下には、ヘルクレームの記載方法、表示方法などの例を記載しました。

A) 主要な記載

●記載例

  • i. 対象となる食物繊維源が食品そのものの場合
    1カップ(● g)のQuaker Oatmealは、コレステロールの低下に役立つことが示されている食物繊維の1日の摂取量の▲%を供給します。
  • ii. 対象となる食物繊維源が原材料の成分の場合
    オーツムギブランを使用したマフィン1個 (● g) で、コレステロールの低下に役立つことが示されている食物繊維を1日の摂取量の▲%を供給します。

オーツムギ食物繊維の供給源で、商品名が明記されている場合 (例:Quaker Oatmeal)、ヘルスクレームの中でそれを繰り返し記載する必要はないとしています。適格なオーツムギ食物繊維源の名称は、オーツムギブラン、押し麦/オートミール、オーツムギ全粒粉であるとしています。また、「オーツムギ」という用語は、これらの供給源の同義語または一般名として使用することができると述べています。
主要な記載で言及される「1日あたりの量」は、オーツムギ食物繊維 (β-グルカン) 3 gであり、この量は前述したコレステロール値の低下に寄与する量です。この表記では、1食分のオーツムギ食物繊維 (β-グルカン) の1日の摂取量に対する割合は、5%ごとに記載を行い、それに合わせた数値の切り上げまたは切り下げをおこなうこととしています。

B) 追加の記載
  • ●オーツムギ食物繊維はコレステロールの低下 (reduce/lower) を助ける
  • ●コレステロール値が高いことは、心疾患の危険因子である
  • ●オーツムギ食物繊維は、心疾患の危険因子であるコレステロールの低下 (reduce/lower) を助ける

上記の追加の記載は、主要な記載の2倍までの大きさと、目立つ文字で主要な記載の隣に記載することができるとしています。


ヘルスクレームを有する食品としての状態

オーツムギ製品は、食品として消費されるか、原材料として消費されるかを問わず、「1. オーツムギ食物繊維 (β-グルカン) の適格な供給源」に記載されている適格なオーツムギ食物繊維 β-グルカン) の供給源の仕様を満たしていなければならないとしています。ヘルスクレームを記載した食品がオーツムギを原材料として添加した調合食品である場合、その調合食品は典型的でない処理を受けていてはならないとしています。ただし、対象となるオーツムギの製品を含むが、典型的でない処理が施された調合食品は、ヘルスクレームを表示するために個別の承認を必要とする場合があると述べています。
さらに、下記の基準が本ヘルスクレームを有する全ての食品に適応されるとしています。

  • A) 基準量および記載サイズの1食分あたり、少なくとも0.75 gのオーツムギ食物繊維 (β-グルカン) を含有する。
  • B) 基準量および記載サイズの1食分あたり、ビタミンかミネラルの推奨栄養摂取重量の少なくとも10%を含有する。
  • C) 食品100 gあたりのコレステロール量が100 mg以下である。
  • D) アルコール含有量が0.5%以下である。
  • E) 基準量および記載サイズの1食分あたりナトリウムの含有量が480 mg以下 (基準量が30 gまたは30 mL以下の場合は50 gあたり480 mg以下)。
  • F) 「飽和脂肪酸を含まない」または「飽和脂肪酸が少ない」という基準を満たしている。

以前の利害関係者の協議では、ヘルスクレームを有するすべての分野の食品は、一定の栄養基準を満たしている必要があるという意見が強く支持されていたと述べています。例えば、血中コレステロールの低下に関するヘルスクレームの場合、血中コレステロールの増加や心疾患に関与する栄養素は制限されることが期待されていたとしています。
カナダ保健省は、上記のヘルスクレームを使用するための条件を整理し、このようなクレームの対象となる食品は、医薬品に関する食品医薬品法の規定に準拠せず、同法の第3項 (1) および (2) に抵触しないことを確認するための規制改正を提案すると述べています。

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【参考文献】
  • 1)Oat Products and Blood Cholesterol Lowering. Summary of Assessment of a Health Claim about Oat Products and Blood Cholesterol Lowering [Internet]. [cited 2021 Nov 24]. Available from: https://www.canada.ca/en/health-canada/services/food-nutrition/food-labelling/health-claims/assessments/products-blood-cholesterol-lowering-summary-assessment-health-claim-about-products-blood-cholesterol-lowering.html
  • 2) Guidance Document for Preparing a Submission for Food Health Claims [Internet]. [cited 2021 Jul 28]. Available from: https://www.canada.ca/content/dam/hc-sc/migration/hc-sc/fn-an/alt_formats/hpfb-dgpsa/pdf/legislation/health-claims_guidance-orientation_allegations-sante-eng.pdf

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