シリーズ『おしえて論文作成』では、論文作成における留意点を紹介していきます。
教えて論文作成 Part 2-2では、文の構造における語句の順番に着目し、論文作成のポイントをご紹介します。

目次

1.前回のおさらい

前回は「文の構造に気を付けようー主語の位置が重要!ー」というテーマで、文の中で特に重要な情報である主語の配置場所についてお話しました。

★前回のコラムは、こちら↓★
https://届出.com/staff-blog/2022.12.09.1695/

英語では、最初に主語、次に動詞、続いて直接目的語、さらに間接目的語を並べることが原則となっています。これらの位置をできるだけ離さないように注意し、読者の思考を分断させないようにすることが大切です。また、文書を読む時に多くの方は左から右、上から下に目を動かすことから、文の最初に重要な情報を置くことで、文章の意味を正しく理解してもらえる可能性が上がります。特に主語は、文章を読む上で読者が最も注目する情報ですので、早めに導入し、動詞の前から離さず、余計な情報を挟まないようにすることが重要です。文章のまとまりを考えて要素を配置すること、重要な情報を最初の方に持ってくることが英作文の根本的な考え方になります。
今回は、主語以外の要素の配置場所についてご紹介致します。

2.目的語の配置

はじめに、目的語の配置についてです。
>前回のおさらいでもお話しました通り、動詞が2つの目的語を取る場合、直接目的語は間接目的語の前に置くことが原則となっています。こちらの例文のように、動詞の後にtoやwithのような前置詞を伴う場合が多いです。

<Example ~目的語の配置~>

※動詞の後にtoやwithなどの前置詞を伴う場合が多い

しかし、直接目的語が長かったり、多くの要素を含み複雑な構造となっている場合、読者は目的語の関連性をつかみにくくなってしまいます。そのような場合は変則的に間接目的語を動詞の近くに置き、文末に直接目的語をまとめることがあります。

<Example ~文末に直接目的語をまとめる~>

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文章のまとまりを考え、目的語の関連性をはっきりさせる!

このような例外があるのは、目的語の関連性をはっきりさせるためであり、文章のまとまりを重視するという英作文の根本的な考え方に従っています。

3.代名詞の配置

続いて、代名詞の配置についてお話します。代名詞は、その前文の名詞を指し示している場合、文頭に置くことができます。こちらの良い例では、itがhoneyを示していることが明らかです。一方、悪い例ではitが後から登場するhoneyを指し示しており、前から順番に読み進めていると、その関連性をすぐに理解することができません。

<Example ~主語は動詞の前に置く~>

悪い例: Honey is a very important substance because …. In fact, it is ….

良い例: Although it is …, studies have verified that the composition of honey is ….

したがって、代名詞は、それ自身が指し示す名詞よりも先に導入してはいけません。

4.否定語の配置

次に、否定語の配置についてです。英語において、否定語は文脈を作る上で重要な役割を果たしていることが多いため、できるだけ文頭に置く必要があります。

<Example ~否定語はできるだけ文頭に置く~>

例: No data were available regarding ….

文の途中に否定語が入っていると読者の思考が中断されるだけでなく、文章の意味を正しく理解してもらえなくなる可能性も高まります。否定語は、基本的に修飾する動詞の前に置き、助動詞やhave, be動詞の現在形、過去形で使用する場合は後に置きます。

<Example ~否定語は本動詞の前・助動詞の後に置く~>

例1: Subjects did not seem to ….

例2: These findings are not significant.

例3: We have not observed ….

5.副詞の配置

副詞の配置に関するルールは複雑ですが、基本的な3つの考え方をこちらに示しました。1つ目は、本動詞の前に置くことです。2つ目は助動詞とhaveが同時に使われている場合、haveの直前に置くことです。3つ目はbe動詞の直後に置くことです。

<Example ~副詞の配置の基本的なルール~>

①本動詞の直前に置く
例: Microbial species often exist in ….

②助動詞とhaveが使われている場合、haveの直前に置く
例: Language would never have arisen ….

③be動詞の直後に置く
例: This detergent is usually used to ….

※時間や場所などを修飾する副詞はこのルールに従わないので注意
(only, also, certainly, manner, timeなど)

しかし、時間や場所などを修飾する副詞など、これらのルールに従わないものもありますので、これらについては別の回で改めてご紹介致します。

6.形容詞の配置

最後に、形容詞の配置についてです。形容詞は通常、1番上の例文のように、修飾する名詞の前に置きます。形容詞を名詞の後に置きたい場合は、2番目の例文のように関係代名詞を使います。修飾する対象がどれなのかわかるよう、修飾していない名詞の前や、名詞と名詞の間には形容詞を置かないように気を付けましょう。

<Example ~修飾する名刺の前に置く、または関係代名詞を使う~>

例: We identified two genes that encode putative protein kinases.

例: This is a paper that is interesting for PhD students.

また、名詞には「形容詞的用法」と呼ばれる用法があります。この用法では、複数の名詞を並べることで、前の名詞がその後の名詞を修飾することができます。

<Example ~形容詞的用法~>

悪い例: state-of-the-art technology

良い例: art state technology

しかし、むやみに名詞を数珠繋ぎにして形容詞を作ると、ネイティブスピーカーには奇妙に聞こえる場合があります。形容詞を自作する場合は、Google Scholar等の学術情報検索サービスで自分が考案した表現を検索し、ネイティブスピーカーが使用している言い回しなのか確認することが望ましいです。もし考案した表現が一般的でなかった場合は、適切な前置詞を挿入するなどして、自然な言い回しに変更しましょう。

今回は、様々な語句の配置順序についてお話しました。
次回は、「Part 3 パラグラフの構成を考えよう」の前半としまして、重要な情報はどこに配置すべきかについてお話しします。