1 概要
臨床試験において、複数の仮説検定を必要とするものが多く、多重性の問題を取り扱う事例があります。例えば、3群以上の検定を行う際、どの群が有意なのか調べるために多重比較の検定を用います。
多重比較の検定にはいくつか種類があり、目的や扱うデータによって手法を選ぶ必要があります。本稿では、多重比較に使う検定についてご紹介します。
2 多重比較法
3群以上の平均値の比較として、分散分析が存在しています。ただ、この分散分析の対立仮説は、「少なくとも1つのペアに差がある」であり、有意な結果であったとしてもどのペアに差があったのかわかりません。臨床試験では、どのペアに差があったのかが重要な意味を示すため、ペア間の差を調べるために多重比較の検定を使用します。以下に多重比較の検定法についてまとめます。
2.1 ボンフェローニ検定
ボンフェローニ検定は、設定した有意水準αを実施する検定数kで割った値α/kを基準に仮説検定を行う手法です。例えば、有意水準を0.05、検定を3回行う場合、P<0.017で差があると判断します。こちらの検定は、検定数が多くなるほど検出力が低下するため、本当は差があるときに有意差がつきにくくなるという欠点があります。
2.2 チューキー検定
チューキー検定は、すべてのペア間を比較する検定法になります。例えば、3群の試験の場合、1群-2群、1-3群、2-3群のペア間で検定を行います。
2.3 ダネット検定
ダネット検定は、プラセボ群と他の群を比較する検定法になります。例えば、3群の試験で1群をプラセボ群とする場合、1群-2群、1群-3群のペア間で検定を行うため、すべてのペア間を比較するチューキー検定よりも検出力が向上します。
2.4 ウィリアムズ検定
ウィリアムズ検定は、群間に順位が想定できる場合に、有効な検定法になります。例えば、低用量群、中用量群、高用量群を比較する試験で、用量反応に単調性がある場合、検出力が向上します。
3 まとめ
今回は、多重比較に使う検定手法をご紹介させていただきました。3群以上のデータを比較する際、どのペアに差があるのか検定するために上記の検定を使用しますが、多重性についてきちんと理解する必要があります。
また、過去には、多重性に関してのブログを掲載しており、以下にURLを載せておきますので、よろしければこちらも合わせてご覧ください。
No | 掲載回 | タイトル | URL |
---|---|---|---|
1 | 第13回生物統計学 | 多重性とは? | https://www.届出.com/pdf/20200622.pdf |
2 | 第14回生物統計学 | 多重性の問題が生じる要因 | https://www.届出.com/pdf/20200629.pdf |
3 | 第60回生物統計学 | 多重比較法について | https://www.届出.com/pdf/20210614.pdf |
4 参考文献
- 阿部 真人. 統計学入門. ソシム株式会社. 2022: 146-50
- 中西ら. 薬理薬効試験におけるこれからの標準的検定手法 薬理薬効試験における Williams 多重比較検定の妥当性と有用性. 日薬理誌. 2014;144: 185-91 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/144/4/144_185/_pdf)
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