1 概要

生活の中で、「五段階の中で最も当てはまるものを選んでください」のような形式のアンケートを目にする機会は多いと思います。このように、程度の差の順番に並べてグループ化する回答尺度を「リッカート尺度」と呼びます。こうした形式のアンケートは、受診のための医療機関への訪問や検体の採取、分析を必要とせず時間や費用がかからない、症状の改善に対する試験参加者の実感の程度を知ることができるという利点があることから、ヒト臨床試験においても頻繁に活用されています。
このリッカート尺度は非常に便利ではありますが、作成するためには妥当性と信頼性を考慮する必要があります。今回は質の高い調査票を作成するために重要な信頼性について紹介します。

2 信頼性

信頼性は「再現性」、「等価性」そして「内的整合性」があり、それぞれ簡単に説明します。

・再現性: 繰り返し測定しても同じ測定値が得られる
再現性の信頼性を推定するためには、一定期間を開けて同じ調査を行い相関関係があるかを調べる必要があります。

・等価性: その検査と類似した構成概念の」検査と一定の関係が認められる
等価性においては、測定したい検査と、項目数・質問内容の難易度・測定したい構成概念・統計量などが、ほぼ等しい検査を作成もしくは類似の尺度を使用して、その二つの検査間の相関係数を信頼性係数とします。

・内的整合性: 尺度内の各項目が同じ構成概念を測定している
リッカート尺度などの心理尺度を構成する各項目が、全体として同じ概念を測定しているといえるかどうかを表す指標です。各項目の内容が一貫性を有しているかを調べるためにいくつかの方法があり、よく使われているのがクロンバックのα係数です。

3 クロンバックのα係数

クロンバックのα係数の公式は以下のような式になります。

各項目の内容に一貫性があると信頼係数が高くなり、内的整合性があるといえます。α係数が0.7以上あることが望ましいです。しかし、α係数において注意しなければならないのは、項目数を増やすと信頼係数が高くなることです。そのため、リッカート尺度を作成する場合は項目数を不必要に増やさず、その質問に真の妥当性があるかを確認することが望ましいです。

4 参考文献

  • 国立教育政策研究所社会教育実践研究センター. 社会教育計画策定ハンドブック-計画と評価の実際-
  • 小谷祐樹. アンケートを用いた質の高い調査研究を行うための手引き. 日集中医誌. 2021;28:180-8.
    (https://doi.org/10.3918/jsicm.28_180)

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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