1 概要
安全性の検証を主たる目的とした臨床試験における症例数について検証しました。
2 各ガイドラインからの情報
2.1 機能性表示食品の届出等に関するガイドライン
とくに記載はないようです。
2.2 ICH E1「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について」
期間が6ヶ月以下の臨床試験 | 期間が12ヶ月の臨床試験 |
---|---|
|
●100例の患者に対して最低1年間投与して得られた成績は,安全性データベースの一部として採用できると考えられる。そのようなデータを得るためには,治験薬を予定される臨床用量で少なくとも1年間投与するように適切に計画されたプロスペクティブな試験を実施すべきである。1年間の投与期間中に何ら重篤な有害事象が認められない場合には,そのような有害事象の1年間の累積発現率は3%未満と考えてよい/p> |
2.3 要指導医薬品の製造販売後調査等の実施方法に関するガイドライン (※)
0.1%の発現頻度の副作用を95%以上の確率で少なくとも1件以上検出するために必要な症例数として原則3000症例以上を収集するとされています。
※このガイドラインは現在使用されていない
オルトメディコで受託した臨床試験は、上式 (1) をもとに例数の算出を行う場合があります。以下に計算例を示しました。
検出力を固定した場合 | 発現率を固定した場合 | ||||
---|---|---|---|---|---|
p | r | n | r | p | n |
0.950 | 0.005 | 598 | 0.050 | 0.95 | 59 |
0.950 | 0.010 | 299 | 0.050 | 0.90 | 45 |
0.950 | 0.015 | 199 | 0.050 | 0.85 | 37 |
0.950 | 0.020 | 149 | 0.050 | 0.80 | 32 |
0.950 | 0.025 | 119 | 0.050 | 0.75 | 28 |
0.950 | 0.030 | 99 | 0.050 | 0.70 | 24 |
0.950 | 0.035 | 85 | 0.050 | 0.65 | 21 |
0.950 | 0.040 | 74 | 0.050 | 0.60 | 18 |
0.950 | 0.045 | 66 | 0.050 | 0.55 | 16 |
0.950 | 0.050 | 59 | 0.050 | 0.50 | 14 |
0.950 | 0.055 | 53 | 0.050 | 0.45 | 12 |
0.950 | 0.060 | 49 | 0.050 | 0.40 | 10 |
0.950 | 0.065 | 45 | 0.050 | 0.35 | 9 |
0.950 | 0.070 | 42 | 0.050 | 0.30 | 7 |
0.950 | 0.075 | 39 | 0.050 | 0.25 | 6 |
0.950 | 0.080 | 36 | 0.050 | 0.20 | 5 |
0.950 | 0.085 | 34 | 0.050 | 0.15 | 4 |
0.950 | 0.090 | 32 | 0.050 | 0.10 | 3 |
0.950 | 0.095 | 31 | 0.050 | 0.05 | 2 |
3 妥当な発現率の探索
治験では安全性試験における症例数の明確な定義がなされているのに対して、機能性表示食品や特定保健用食品のガイドラインではあいまいの表現にとどまっている。基本的には式 (1) を利用するが、発現率の明確な根拠がないため、その根拠および実現可能性の高い症例数を提案する。
3.1 治験のガイドラインより
ICH E1では「例えば,3カ月間の累積発現率が約1%」や「一般的には0.5~5%程度」といった記載があるので、0.5%、1.0%、5.0%について3の法則を利用して考えてみます。
3の法則: 比率が0%または100%のときの信頼区間は、3を症例数で除することで算出できる。
それぞれのnは、600例、300例、60例となる。式 (2)~(4) より目標症例数は300例~600例が望ましいと推定されるが、食品の臨床試験において経済的な面から実現性は乏しいと考えています。しかし、目標症例数60例は、実現可能な範囲といえると思います。よって、副作用や有害事象の発生率は5%程度と想定することが最も実現性が高いのではないかと考えています。
4 まとめ
安全性を主たる目的とした臨床試験において、品質を3段階に分類しました。レベル3では、ある程度根拠があり、かつ実現可能な例数を提案します。レベル2は、式 (1) に基づいて計算しているが発現率や検出率を自由に変更することによって、例数を変動させることができるグループです。レベル1では、統計処理ができる最低限の症例数としました。また、妥当な発現率については制度の変更やその他の情報の更新を考慮するため引き続き調査を続ける必要があると考えています。
品質 | 目標症例数 | |
---|---|---|
単群前後比較デザイン | 並行群間比較デザイン (※) | |
レベル3 | 60例~ | 120例~ |
レベル2 | 11例~59例 | 22例~118例 |
レベル1 | 10例 | 20例 |
5 参考文献
- ●致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について[https://www.pmda.go.jp/files/000156199.pdf]
- ●要指導医薬品の製造販売後調査等の実施方法に関するガイドライン[https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000092788.pdf]
- ●岩崎学, 吉田清隆. 稀な事象の生起確率に関する統計的推測-Rule of Threeとその周辺-. 計量生物学. 2005; 26: 53-63. [DOI: https://doi.org/10.5691/jjb.26.53]
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