1 概要

臨床試験のデザインや解析は、生物統計家の貢献が不可欠です。統計学的留意事項は原則的にプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿は、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 解析方法

本稿では、「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の「解析方法 (Analysis methods)」についてまとめます。

2.1 記載内容

「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」には解析方法について以下のような記述がなされています。

Outcome definitions 27a What analysis method will be used and how the treatment effects will be presented
27b Any adjustment for covariates
27c Methods used for assumptions to be checked for statistical methods
27d Details of alternative methods to be used if distributional assumptions do not hold, e.g., normality, proportional hazards, etc.
27e Any planned sensitivity analyses for each outcome where applicable
27f

Any planned subgroup analyses for each outcome including how subgroups are defined

解析方法 27a どのような分析方法を用いて、治療効果をどのように示すのか
27b 共変量の調整の詳細
27c 統計的手法の前提条件を確認するために使用した方法
27d 分布の仮定 (例: 正規性,比例ハザードなど) が成り立たない場合に使用する代替法
27e 各結果について計画された感度分析
27f 各結果について計画されているサブグループ分析

2.2 解析方法を記載する

臨床試験の結果および結論は、使用する解析方法に大きく左右されるため、最も良い結果が得られるという理由で解析方法が選択されがちです。それを排除するために、分析方法を事前に決めておくことが非常に重要です。統計解析計画書は統計的比較のためにどのような分析方法を用いるか、また、該当する場合はどの試験参加者をこの分析に含めるかを明記する必要があります。また、表示される記述統計量、各効果の推定値の単位、信頼区間およびp値の報告の有無など、どのような要約尺度が報告されるかを定義する必要があります。主要アウトカムの解析に2つ以上の方法 (例えば、共変量による調整と未調整) を使用する場合、主要な解析方法を特定する必要があります。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

例1
「…ベースライン変数で調整した上で、マルチレベル・ロジスティック回帰を用いて実施する。マルチレベル・ロジスティック回帰モデルで調整するベースライン変数は、MEDSスコアの構成要素 (年齢、転移性がん、介護施設への入居、精神状態の変化、敗血症性ショック、呼吸困難、血小板数の低下、好中球数の低下) と部位レベルのランダム効果とする」

例2
「無作為化は各治療群について報告される。一次効果の推定値は90日死亡率の相対リスクとし、95%CIを記載する。また、絶対的なリスク低下と95%CIも報告される。無作為化後90日までの死亡率は、フィッシャー正確検定を用いて調整せずに治療群間で比較する」

4 参考文献

  •  Gamble C, Krishan A, Stocken D, Lewis S, Juszczak E, Doré C, Williamson PR, Altman DG, Montgomery A, Lim P, Berlin J, Senn S, Day S, Barbachano Y, Loder E. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318 (23): 2337-43. (PMID: 29260229)
  • 折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.
  • 厚生労働省. 「臨床試験のための統計的原則」について (平成10年11月30日).
    (https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf) (2021年12月20日アクセス可能)

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