前回の届出Newsに引き続き、今回もアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administra-tion; FDA) が発行するガイダンスについてご紹介します。今回は、「水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患」についてお伝えします。『飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患』、『食物繊維と癌』に関するアメリカ食品医薬品局ガイドラインについては、【第41回届出News: 脂質摂取と癌】、【第43回届出News: 食物繊維と癌】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●FDAガイダンス

~水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患ついて~1)

a) 飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、食物繊維 (特に水溶性食物繊維) を含む果物、野菜、穀物を多く含む食事と冠動脈性心疾患への発症リスクとの関係

心血管疾患とは、心臓と循環器系の疾患を意味します。冠動脈性心疾患は、心血管疾患の中でも最も深刻な疾患であり、心筋とそれを支える血管の疾患を指します。血中の総コレステロール値と低密度リポタンパク質 (Low Density Lipoprotein; LDL) コレステロール値が高値を示す時、冠動脈性心疾患の発症リスクが高いと述べています。
冠動脈性心疾患の発症リスクが高まるのは、血中総コレステロール値が240 mg/dL (6.21 mmol/L) 以上、またはLDL-コレステロール値が160 mg/dL (4.13 mmol/L) 以上の者と述べています。またアメリカでは、血中総コレステロール値の境界域は、200~239 mg/dL (5.17~6.18 mmol/L)、LDL-コレステロール値は130~159 mg/dL (3.36~4.11 mmol/L) となっています。
飽和脂肪酸とコレステロールを多く含む食事は、血中の総コレステロール値とLDLコレステロール値を上昇させ、その結果、冠動脈性心疾患の発症リスクを高めることが報告されています。一方、飽和脂肪酸やコレステロールの少ない食事は、血中の総コレステロール値やLDLコレステロール値を低下させ、その結果、冠動脈性心疾患の発症リスクを低下させることが分かっています。
血中のコレステロール値が比較的低い人は、脂質、特に飽和脂肪酸とコレステロールが少ないだけでなく、果物、野菜、穀物を比較的多く摂取する食生活を送っている傾向があります。これらの植物性食品の具体的な役割はまだ完全には解明されていませんが、多くの研究によって植物性食品を多く含む食事は、冠動脈性心疾患のリスクを低減させることが示されています。また、これまでの研究では、果物、野菜、穀物を多く摂取する食生活と、これらの食事から得られる食物繊維などの栄養素が、冠動脈性心疾患の発症リスク低減と関連していることが報告されています。そして、このような食生活を送っている人は、食物繊維、特に水溶性食物繊維を多く摂取していることが分かっています。現在のところ、特定の種類の水溶性食物繊維が有益であるかどうか、あるいは、果物、野菜、穀物の冠動脈性心疾患に対する予防効果を示す成分、またはこれらの成分の組み合わせによるものであるかどうかについて、科学的な結論は得られていません。

b) 飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、食物繊維 (特に水溶性食物繊維) を含む果物、野菜、穀物を多く含む食事と冠動脈性心疾患への発症リスクとの関係に対する重要性

冠動脈性心疾患は、他の疾患よりも死亡者数が多いことから、アメリカにおいて大きな問題とされています。そのため、冠動脈性心疾患の危険因子を早期に治療することは、この問題を解決する方法の1つであるとしています。
冠動脈性心疾患による死亡リスクは、血中LDL-コレステロール値の上昇に伴って連続的に増加します。血中LDL-コレステロール値が高い人は冠動脈性心疾患のリスクが高いことが分かっており、冠動脈性心疾患のリスクが高い者はアメリカの成人人口のかなりの割合を占めていると言われています。研究によると、血中コレステロール値が正常範囲の人を含めた多くの人において、飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量の減少させることは、血中のコレステロールと心血管疾患のリスクが減少するということを報告しています。さらに、果物、野菜、穀物など水溶性食物繊維を含む食材を用いた食事を摂取することは、低飽和脂肪酸および低コレステロール食の補助として有効であると考えられています。
冠動脈性心疾患のその他の危険因子としては、心血管疾患の家族歴、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満 {体重が理想体重 (身長に対して最も健康リスクが低い体重) より30%以上多い}、運動不足などが挙げられます。
アメリカでは、多くの人の飽和脂肪酸の摂取量が推奨値を超えていることが問題になっており、コレステロールの摂取量も、平均して推奨値またはそれ以上とされています。冠動脈性心疾患のリスクに関する主要な推奨事項の1つは、1日に摂取する熱量のうち、10%未満を飽和脂肪酸から摂取し、脂肪からの熱量摂取量を平均30%以下にすることであるとしています。また、コレステロールの推奨摂取量は、1日あたり300 mg以下にすることも挙げています。また、推奨する食物繊維の総摂取量は、1日あたり25 gであり、そのうちの25% (約6 g) が水溶性食物繊維でなければならないとしています。
現在の食事指導では、血中LDL-コレステロール値を下げるために、食事の脂肪、特に飽和脂肪酸とコレステロールの摂取を減らし、食物繊維を多く含む食品の摂取を増やすことが推奨されています。これまでの研究から、食物繊維を含む果物、野菜、穀物製品が血中LDL-コレステロール値の低下に役立つことが明らかになっています。

c) 飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、食物繊維 (特に水溶性食物繊維) を含む果物、野菜、穀物を多く含む食事と冠動脈性心疾患への発症リスクの要件

商品を販売する際は、連邦規則集21巻§101.142)に定められた要件 (機能性関与成分を含む食品成分の表示の方法、機能性関与成分の適格性および有効性・安全性の表示方法等) を満たすことが求められています。
本ヘルスクレームを謳った食品は、以下の内容を踏まえて記載することとしています。

  • A) ヘルスクレームを謳う食品は、果物、野菜、穀物、またはそれらを含むものとする。
  • B) 連邦規則集21巻§101.93)に記載された「低脂肪」の要件を満たすこととする。(「低脂肪」食品とは、対象となる食品の通常摂取量が30 g以上である時に、脂肪含有量が0.5 g以上3 g以下の時を指すと述べられています。)
  • C) ヘルスクレームを謳った食品は、有効性を示す食材以外の食材が、通常消費される基準量あたり少なくとも0.6 gの水溶性食物繊維を含むことと示されています。
  • D) 水溶性食物繊維の含有量は、連邦規則集21巻§101.544)に記載された、栄養素の含有量の要件を満たす必要があるとしています。
    また、食品のラベルまたは表示については、以下の条件を踏まえて、記載することが必要であると述べています。

    • 1.ヘルスクレームでは、飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、食物繊維を含む果物、野菜、穀物は、心血管疾患へのリスクを低減させる「可能性がある」または「かもしれない」としていること。
    • 2.ヘルスクレームでは、疾患を特定する際に、「心血管疾患」または「冠動脈性心疾患」の用語を使用していること。
    • 3.本ヘルスクレームを謳うことが出来る食材は、食物繊維を含む果物、野菜、穀物のみとすること。
    • 4.本ヘルスクレーム内には、「食物繊維 (fiber, dietary fiber)」、「ある種の食物繊維 (some types and dietary fiber)」、「一部の食物繊維 (some dietary fibers, some fibers)」、「水溶性食物繊維 (soluble fiber)」という単語を使用すること。
    • 5.脂肪成分を特定する際に、「飽和脂肪酸」、「コレステロール」という用語を両方とも使用していること。
    • 6.ヘルスクレームは、飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、食物繊維 (特に水溶性食物繊維) を含む果物、野菜、穀物を多く含む食事をすることによって、冠動脈性心疾患の発症リスクがいかなる程度の減少であったとしても、これらの食品の使用に起因すると説明してはならないとすること。

d) 飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、食物繊維 (特に水溶性食物繊維) を含む果物、野菜、穀物を多く含む食事と冠動脈性心疾患への発症リスクの任意の情報記載

ヘルスクレームを記載する際は、冠動脈性心疾患の家族歴、血中総コレステロールおよびLDL-コレステロールの上昇、体重過多、高血圧、喫煙、糖尿病、身体活動の低下も危険因子であることが記載できるとしています。
飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、食物繊維を含む果物、野菜、穀物を多く含む食事との関連をヘルスクレームに記載する際は、「血中コレステロール」、「血中総コレステロール」、「LDL-コレステロール」などの成分を介している旨を記載できると述べています。
先述のa)および b)の情報のうち、飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、食物繊維を含む果物、野菜、穀物を多く用いた食事と冠動脈性心疾患との関係やその重要性をまとめたものを含めて、ヘルスクレームに記載することが出来るとしています。
栄養素を特定する際は、飽和脂肪酸とコレステロールに加えて、「脂質」という用語を用いることが出来るとしています。
ヘルスクレームは、アメリカ国内の冠動脈性心疾患の患者数に関する情報を含めて記載することが出来るとしていますが、この情報の出所を明らかにしなければならず、農務省 (U.S. Department of Agriculture; USDA) 及び保健福祉省 (Department of Health and Human Services; HHS) が発行する「Dietary Guide-lines for Americans」、国立衛生統計センター (National Center for Health Statistics; NCHS)、国立衛生研究所 (National Institu-tes of Health; NIH) からの最新の情報でなければならないとしています。
ヘルスクレームは、USDAおよびHHSが発行する「Dietary Guidelines for Americans」に準拠していることが求められています。
本ヘルスクレームを謳った食品を販売する際のラベルには、血中総コレステロール値またはLDLコレステロール値が高い者は、医師に相談し、治療を受けるべきであることを表示しても良いとしています。また、血中総コレステロール値、LDL-コレステロール値の高値および基準値を定義している場合、血中コレステロールが高い者は医師に相談し、治療を受けるべきであることをラベルに表示する必要があると記載されています。

推奨されるヘルスクレームの記載例

  • 飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、ある種の食物繊維、特に水溶性食物繊維を含む果物、野菜、穀物が豊富な食事は、多くの要因によって発症する心血管疾患のリスクを軽減する可能性があります。
  • 心血管疾患の発症は多くの要因に左右されます。飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、食物繊維を含む果物、野菜、穀物が豊富な食事を摂ることは、血中コレステロール値を下げ、心血管疾患の発症リスクを低下させます。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

この記事をPDFでダウンロードする