前回の届出Newsに引き続き、今回もアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administra-tion; FDA) が発行するガイダンスについてご紹介します。今回は、「果物・野菜と癌」についてお伝えします。『脂質摂取と癌』、『食物繊維と癌』に関するアメリカ食品医薬品局ガイドラインについては、【第40回届出News: 脂質摂取と癌】、【第43回届出News: 食物繊維と癌】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●FDAガイダンス

~果物・野菜と癌ついて~1)

a)低脂肪で果物・野菜の多い食事の摂取と癌のリスク関係

癌は、100を超えるさまざまな疾患の集合体であり、それぞれが異常な細胞の急激な成長と、その細胞の拡散によって引き起こされます。癌の発症は、多くの原因と段階があります。遺伝的および環境的危険因子の両方が癌のリスクに影響を与える可能性があります。危険因子としては、特定の種類の癌の家族歴、喫煙、過体重や肥満、アルコール摂取、紫外線またはイオン化放射線、癌の原因となる化学物質への曝露、および食事が挙げられます。
植物性食品に含まれる数多くの機能性成分の、癌に対する具体的な役割はまだ解明されていませんが、多くの研究で、植物性食品を多く摂取する食事によって、いくつかの種類の癌のリスクを低減させることが示されています。これらの研究では、果物や野菜を多く含む食生活と、果物と野菜に含まれるビタミンC、ビタミンA、食物繊維などの栄養素が、癌のリスク低減と関連していることが分かっており、このような食事をしている人は、これらの栄養素をよく摂取していると考えられています。現在、果物と野菜の癌の発症予防効果が、食物繊維、ビタミンA (β-カロテン)、ビタミンCなど、果物と野菜を多く含む食事に含まれる栄養素の組み合わせによる影響なのか、これらの食材によって脂肪の排出が促されたため、あるいは栄養素によるものではないが、癌の発症リスクを予防する可能性のある他の物質の摂取によるものなのかについては、科学的な結論は得られていません。

b)低脂肪で果物・野菜の多い食事の摂取と癌のリスクに関する重要性

癌は、アメリカにおいて死亡原因の第1位です。直接的な医療費、発症や死亡による損失を含め、癌による経済的損失は全体として非常に高いとされています。
アメリカの食事は、脂肪が多く、果物や野菜が少ない傾向にあります。世界各国における研究によると、植物性食品を多く含む食事を習慣的に摂取している人々は、一部の癌のリスクが低いことが示されています。これらの食事は脂肪が少なく、食物繊維、ビタミンA (β-カロテン)、ビタミンCなど、多くの栄養素が豊富に含まれていることが分かっています。アメリカの食事ガイドラインでは、脂肪摂取量の削減 (熱量の30%未満)、望ましい体重 (標準体重) の維持、果物と野菜 (1日5品目以上) の消費量を増加させることが推奨されています。

c)低脂肪で果物・野菜の多い食事の摂取と癌のリスクにおける要件

商品を販売する際は、連邦規則集21巻 §101.142)に定められた要件 (機能性関与成分を含む食品成分の表示の方法、機能性関与成分の適格性および有効性・安全性の表示方法等) を満たすことが求められています。
本ヘルスクレームを謳った食品のラベルや表示内容については、以下の条件を踏まえて記載することとしています。

  • A) ヘルクレームには、低脂肪で果物、野菜が多い食事が、一部の癌のリスクを「軽減する」または「軽減する可能性がある」と述べることが出来るとしています。
  • B) ヘルスクレームに疾患名を記載する際は、「一部の種類の癌」、「一部の癌」を用いることができるとしています。
  • C) 本ヘルスクレームを謳った食品は、低脂肪かつビタミンA、ビタミンC、食物繊維を含む果物と野菜であることが求められています。
  • D) 食物繊維、ビタミンA、またはビタミンCについて、連邦規則集21巻§101.543)に記載された、栄養素の含有量の要件を満たす必要があるとしています。
  • E) ヘルスクレームは、低脂肪で果物や野菜が多い食事によって、癌のリスクがいかなる程度の減少であったとしても、これらの食品の使用に起因すると説明してはならないとしています。
  • F) ヘルスクレームを謳った食品の脂肪成分を特定する際は、ヘルスクレーム内に「脂質」または「脂肪」という用語を使用することが出来るとしています。
  • G) ヘルスクレーム内には、「繊維」、「食物繊維」、「総食物繊維」という単語を使用することが出来るとしています。
  • H) ヘルスクレーム内には、癌の発症リスクに関連する可能性のある食物繊維の種類を明記することはできないとしています。
  • I) ヘルスクレームには、癌の発症は多くの要因によって発症することが示すこととしています。
  • J) 連邦規則集21巻§101.624)に記載された「低脂肪」の要件を満たすこととしています。(「低脂肪」食品とは、対象となる食品の通常摂取量が30 g以上である時に、脂肪含有量が0.5 g以上3 g以下の時を指すと述べられています。)

d)低脂肪で果物・野菜の多い食事の摂取と癌のリスクの任意の情報記載

本稿a) およびb) の内容を踏まえて記載することが出来るとしています。
ヘルスクレームを記載する際は、特定の種類の癌の家族歴、喫煙、飲酒、過体重及び肥満、紫外線や放射線、癌の原因となる化学物質への暴露、および食生活の要因等、癌発症に寄与する危険因子を特定することできるとしています。
また、ヘルスクレームを謳った食品の有効成分がビタミンAではなく、β-カロテンである場合、ビタミンA (β-カロテン) と記載することが出来るとしています。
ヘルスクレームは、農務省 (U.S. Department of Agriculture; USDA) および保健福祉省 (Department of Health and Human Services; HHS) が発行する「Dietary Guidelines for Americans」に準拠していることが求められています。
ヘルスクレームは、アメリカ国内の癌患者数に関する情報を含めて記載することが出来るとしていますが、この情報の出所を明らかにされなければならず、USDA及びHHSが発行する「Dietary Guidelines for Americans」、国立衛生統計センター (National Center for Health Statistics; NCHS)、国立衛生研究所 (National Institutes of Health; NIH) からの最新の情報でなければならないとしています。

推奨されるヘルスクレームの記載例

  • 果物や野菜を豊富に含む低脂肪食 (低脂肪で、食物繊維、ビタミンA、ビタミンCを含む可能性のある食品) は、様々な要因によって引き起こされる疾患である癌の発症リスクを低減させる可能性があります。ブロッコリーは、ビタミンAとビタミンCが豊富であり、食物繊維の含有量も優れています。
  • 癌の発生は多くの要因に依存しています。低脂肪の果物や野菜を豊富に含んだ食事、つまり、脂肪が少なく、ビタミンA、ビタミンC、食物繊維を含んでいる可能性のある食事は、一部の癌の発症リスクを低下させる可能性があります。オレンジは、脂肪の含有量が少なく、食物繊維やビタミンCの含有量も優れています。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

この記事をPDFでダウンロードする