前回の届出Newsに引き続き、今回もアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administra-tion; FDA) が発行するガイダンスについてご紹介します。今回は、「葉酸と神経管欠損症」についてお伝えします。

●FDAガイダンス

~葉酸と神経管欠損症ついて~1)

a)葉酸と神経管欠損症との関係

神経管欠損症は、脳または脊髄の深刻な先天性欠損症であり、乳児の死亡割合または重度の障害を引き起こす可能性があります。先天性である無脳症と二分脊椎は、神経管欠損症の最も一般的な疾病であり、これらの欠損症は神経管欠損症の約90%を占めています。これらの欠陥症は、妊娠初期の胚発生時に脳または脊髄を覆う組織の閉鎖がうまくいかなかったために生じるとされています。神経管は、妊娠初期に形成されるため、女性が妊娠していることに気付く前にこのような欠陥が発生する可能性があります。
これまでの研究データによると、葉酸を十分に含有する食事は、神経管欠損症のリスクを低減する可能性があります。この関係を示す最も有力な科学的根拠は、イギリスの医学研究評議会が実施した介入研究から得られたものです。この研究によると、神経管欠損症児を妊娠するリスクがある女性が、妊娠前から妊娠初期まで毎日4 mg (4000 μg) の葉酸を含むサプリメントを摂取した場合、神経管欠損症児の出産が減少しました (この摂取量は医薬品であるとしています)。また、ハンガリーで実施された、800 μg (0.8 mg) の葉酸を含むマルチビタミン・マルチミネラル製剤を妊娠期間中に使用した介入試験と、0~1000 μgの葉酸を含むマルチビタミンを妊娠期間中に使用した観察研究のレビューにおいて、FDAは、上記の研究のほとんどが、通常の食生活で摂取可能なレベルの葉酸であり、この濃度の葉酸を摂取することで神経管欠損症のリスクを低減する可能性があるという結論を示しています。また、これらの結果は他の研究結果と一致すると結論づけています。

b)葉酸と神経管欠損症との関連における重要性

神経管欠損症は、米国では1000人の出生のうち約0.6人に見られるといわれています (つまり、10000人の出生のうち約6人、年間400万人の出生のうち約2500人の症例)。神経管欠損症は、多くの要因によって引き起こされると考えられています。神経管欠損症の発症につながる妊娠における唯一かつ最大の危険因子は、個人的または家族的な既往歴です。しかし、神経管欠損症児の約90%は、家族歴のない女性から生まれています。そのため、葉酸を十分に摂取することは、神経管欠損症のリスクを軽減するうえで重要な役割を担っていると考えられますが、他の先天性欠損症のリスクは軽減されないことが報告されています。
神経管欠損症の発症リスクは、遺伝、地域的条件、社会経済的条件、母親の出生コホート、受胎月、人種、栄養状態、母親の年齢や出産歴などを含む母親の健康状態など、さまざまな要因によって変化することが報告されています。近親者 (兄弟、姪、甥) に神経管欠損症の人がいる女性、インスリン依存性糖尿病 (若年性糖尿病) の者、バルプロ酸やカルバマゼピンで治療を受けている発作性疾患の女性は、上記の疾患等を持たない女性に比べて、神経管欠損症の発症リスクが著しく高くなるとされています。神経管欠損症の発生率はアメリカ国内でも異なり、西海岸では東海岸よりも発生率が低いことが分かっています。
葉酸を1日あたり400 μg (0.4 mg) 以上含むマルチビタミン製剤を使用した研究を含む、いくつかの研究から得られた情報を統合した結果に基づき、米国公衆衛生局は、1日あたり葉酸単体で400 μg (0.4 mg) の摂取が神経管欠損症のリスクを減少させる可能性があると推測しています。低用量の葉酸を用いた研究で行われた有効性の評価では、神経管欠損症の発生リスクの減少は、報告書によってまちまちです。十分な葉酸を摂取することで、一部の神経管欠損症を回避できる可能性があると期待されていますが、神経管欠損症の根本的な原因は分かっていません。そのため、十分な葉酸を摂取することで、どの程度の神経管欠損症が回避されるかは不明であるとしています。現在までに分かっている情報から、アメリカ公衆衛生局は、現在発生している症例の50% (すなわち、1年あたり約1250症例) を回避できる可能性があると推定しています。しかし、さらなる研究がなされるまでは、この割合の確実な推定値は得られないとしています。

c)葉酸と神経管欠損症との関係における要件

商品を販売する際は、連邦規則集21巻
§101.142)に定められた要件 (機能性関与成分を含む食品成分の表示の方法、機能性関与成分の適格性および有効性・安全性の表示方法等) を満たすことが求められています。
本ヘルスクレームを謳った食品は、以下の内容を踏まえて記載することとしています。

  • A) ヘルスクレームには、葉酸 (folate、folic acid、folacin)、葉酸とビタミンB (“folate, a B vitamin”、”folic acid, a B vitamin”) の用語を用いることができるとしています。
  • B) ヘルスクレームに疾患名を記載する際は、「神経管欠損症」、「二分脊椎または無脳症の先天性欠損症」、「脳または脊髄無脳症や二分脊椎などの先天性欠損症」、「二分脊椎および無脳症、脳または脊髄の先天性欠損症」、「脳または脊髄の先天性欠損症」とすることとしています。
  • C) ヘルスクレームは、葉酸の摂取が神経管欠損症の唯一の解決方法であると意味するように記載することはできないとしています。
  • D) ヘルスクレームは、妊娠期間を通して適切な葉酸摂取量を維持することによって、神経管欠損症がいかなる程度の減少であったとしても、葉酸の使用に起因すると説明してはならないとしています。
    具体的な内容としては、一部の女性が妊娠期間中に葉酸の適切な摂取を維持することによって神経管欠損症児妊娠のリスクを減らすかもしれないと述べなければならないとしています。母集団ベースのリスク削減の推定値について記載する場合は、以下の内容に従うことが求められています。
    すべての女性が妊娠期間を通して適切に葉酸を摂取した場合に、アメリカで発生する可能性のある神経管欠損症児の出生数の減少についての推定値をヘルスクレームに含めることができます。本稿b) で紹介した、葉酸を1日あたり0.4 mg摂取することで、発症リスクを減少させる推定値 (すなわち、神経管欠損症の発症リスクが50%になる) を提供する場合は、発症リスクに関する値は母集団ベースで算出する必要があり、個々の女性が経験する可能性のあるリスク低減を反映していないことを示す追加情報を添付するものとします。
  • E) 葉酸の1日あたりの栄養摂取目標量 (4歳以上の者が使用するためのラベルが付けられている場合は0.4 mg、妊娠中または授乳中の者が使用するためのラベルが付けられている場合は、0.8 mg) の100%以上を含有する食品には1日あたりの安全上限摂取量を示す必要があります。また、1日あたりの安全上限摂取量の安全上限が1000 μg (1 mg) であるとカッコ内に記載することもできるとしています。
  • F) 葉酸が健康的な食事の一部として消費することが必要であると述べる必要があるとしています。

本ヘルスクレームを謳った食品は、連邦規則集21巻§101.543)に記載された、栄養素の含有量の要件を満たす必要があるとしています。
本ヘルスクレーム謳った食品は、米国薬局方 (United States Pharmacopeia: USP) が定める崩壊と溶解の基準を満たす必要があるとしています。ただし、該当するUSPの基準がない食品である場合は、製品ラベルに記載された使用条件下においての生物学的利用能があることを示す必要があるとしています。
本ヘルクレームでは、1食または1単位あたり、レチノールとしてのビタミンA、または既成ビタミンAもしくはビタミンDの食事摂取基準 (RDI) の100%を超える量を含む食品に対して行ってはならないとしています。
本ヘルスクレームにおける栄養表示は、食品中の葉酸の量に関する情報を含まなければならなりません。この情報は、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄の量のみが提供されている場合は、鉄に関する情報を提供した後に、その他の任意のビタミンまたはミネラルが明記されている場合は、連邦規則集21巻§101.94)に従って表示に記載しなければならないとしています。

d) 葉酸と神経管欠損症の任意の情報記載

本稿a) およびb) の内容を踏まえて記載することが出来るとしています。
本ヘルスクレームを謳った食品の表示には、神経管欠損症の病歴のある女性は妊娠する前に医師または医療従事者に相談すべきであると記載することが求められています。
ヘルスクレームには、葉酸の一日摂取量 (400 μg) を設定することが出来るとしています。
ヘルスクレームには、アメリカにおける、年間の神経管欠損症児の推定値を記載することが出来るとしています。また、この推定値は米国公衆衛生局からの最新の情報に準拠する必要があり
ますが、もし参照することが出来ない場合は、b)の内容 (年間10000人の内、約6人が出生時に神経管欠損症である) を記載することが出来るとしています。ヘルスクレームには、「葉酸の供給源には、果物、野菜、全粒穀物製品、強化シリアル、栄養補助食品が含まれる」、または「十分な量の葉酸は、果物、濃い緑の葉物野菜、マメ科植物、全粒穀物製品、強化シリアル、または栄養補助食品が豊富な食事から得ることができる」、「十分な量の葉酸は、柑橘系の果物やジュースを含む果物、濃い緑の葉物野菜を含む野菜、豆類、パン、米、パスタを含む全粒穀物製品、強化シリアル、または栄養補助食品を含む食事から得ることができる」などを引用して、葉酸の摂取に適した食事を特定することもできるとしています。

推奨されるヘルスクレームの記載例

➀1食分または1単位あたりの葉酸の1日摂取量が100%以下の食品を対象としたヘルスクレーム例

  • ・適量の葉酸を含む健康的な食事は、脳または脊髄の先天性欠損症児の出生リスクを減らす可能性があります。
  • ・健康的な食事に適量の葉酸が含まれていると、脳や脊髄の先天性欠損症児の出生リスクを減らすことができます。
  • ・出産期間を通じて適量の葉酸を含む健康的な食事をとる女性は、脳や脊髄の先天性欠損症児を産むリスクを減らすことができます。葉酸の供給源には、果物、野菜、全粒穀物製品、強化シリアル、栄養補助食品が含まれます。

②1食分または1単位あたりの葉酸の1日摂取量が100%以上の者を対象としたヘルスクレーム例

・適切な葉酸を含む健康的な食事を摂取する女性は、脳または脊髄の先天性欠損症児。葉酸摂取量は1日摂取量の250%(1,000 μg)を超えてはなりません。
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【参考文献】

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