前回の届出Newsに引き続き、今回もアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administra-tion; FDA) が発行するガイダンスについてご紹介します。今回は、「非う蝕性甘味料とう蝕」についてお伝えします。『口腔内環境を良好に保つ』に関する最終製品の届出については、【第30回届出News】、『歯ぐきの健康・口腔内環境の維持』に関する欧州食品安全機関のガイダンスについては、【第21回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●FDAガイダンス

~非う蝕性甘味料とう蝕~1)

a) 炭水化物 (甘味料) とう蝕について

う蝕、または虫歯は、様々な要因によって引き起こされる病気です。環境的要因と遺伝的要因の両方がう蝕の発症に影響を与える可能性があります。危険因子には、歯のエナメル質の結晶構造とミネラル含有量、プラークの量と質、唾液の量と質、個々の免疫応答、消費される食品の種類と物理的特性、食事行動、口腔内細菌とその菌の集団が産生する酸などがあります。
発酵性糖質、すなわち食事性糖質およびデンプンの消費と虫歯との関係は十分に確立されています。砂糖としても知られているショ糖は、食事中のう蝕に関連する糖の中で最も多い関連があるとものの1つですが、それだけではありません。口腔内細菌は、ほとんどの食事の炭水化物を代謝し、酸を生成し、プラークを形成することができます。食事性糖質やデンプンへの歯の曝露が頻繁で長くなるほど、虫歯のリスクが高くなります。
う蝕は、多くのアメリカ人に影響を及ぼし続けています。子供たちのう蝕の罹患率は低下していますが、この病気は依然として人口全体に広がっており、アメリカ人に大きな負担をかけています。近年、アメリカでは糖質の摂取は適量にし、菓子の過度な摂取を避けることを推奨しています。糖質やデンプンを多く含む菓子を頻繁に摂取することは、たとえ歯磨きを同じようにしたとしても、歯に悪影響を与える可能性が高くなると考えられています。
糖アルコールなどの非う蝕性甘味料は、チューインガムや特定の菓子などの食品のショ糖やトウモロコシ由来の甘味料などの食事性糖質の代わりに使用できるとしています。非う蝕性甘味料は、食事性糖質およびその他の発酵性糖質よりもう蝕になる可能性が低いと考えられています。

b) 非う蝕性甘味料とう蝕の関係について

非う蝕性甘味料はう蝕を促進しないとされています。非う蝕性甘味料は、口腔内細菌によって酸が産生されますが、酸の生成の速度と量は、ショ糖や他の発酵性糖質からの生成よりも大幅に少ないため、歯のエナメル質から重要なミネラルが失われることはないと述べています。

c) 非う蝕性甘味料とう蝕との関係を謳ったヘルスクレームの要件

商品を販売する際は、連邦規則集21巻
§101.142)に定められた要件 (機能性関与成分を含む食品成分の表示の方法、機能性関与成分の適格性および有効性・安全性の表示方法等) を満たすことが求められています。
また、食品のラベルまたは表示については、以下のような内容を踏まえて、記載することが必要であると述べています。

  • ①ヘルクレームは、糖質とデンプンを多く含む食品を、菓子などの間食として、食事の間に頻繁に摂取すると虫歯を促進する可能性があると示す必要があります。
  • ②ヘルスクレームは、食品に含まれる非う蝕性甘味料によって、「う蝕を促進しない」、「う蝕リスクを低減する可能性がある」、「う蝕を促進しないので有用」、または「う蝕を促進しないことが明らかである」と述べる必要があります。
  • ③栄養素を特定する際、ヘルスクレームには、「糖アルコール」、または物質の名称 (例: 「ソルビトール」「D-タガトース」) を記載する必要があります。
  • ④「虫歯」または「う蝕」のみ、本ヘルスクレーム内に用いることが出来る疾患名としています。
  • ⑥ヘルスクレームは、本ヘルスクレームを謳った食品のう蝕のリスクがいかなる程度の減少であったとしても、非う蝕性甘味料を含有する食品の使用に起因すると説明してはならないとしています。
  • ⑦ヘルスレームには、う蝕のリスクを低減するための唯一の手段が、非う蝕性甘味料を含む食品の摂取であるかのように記載することはできないとしています。
  • ⑧表示に使用できる表面積が15平方インチ未満 (約97 cm2) のパッケージは、➀および②を記載しなくても良いとしています。
  • ⑨ヘルスクレームの対象となる物質が非う蝕性甘味料である場合、ヘルスクレームは、他の糖とは異なり、う蝕の発症を促進しない糖であるため、その物質を特定しなければならないとしています。
    本ヘルスクレームで適格とされた非う蝕性甘味料が以下のようにまとめられていました。
  • (A) 糖アルコールのキシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトール、水素化デンプン加水分解物、水素化グルコースシロップ、およびエリスリトール、またはこれらの組み合わせ
  • (B) D-タガトースおよびイソマルツロース
  • (C) スクラロース

本ヘルスクレームを謳ううえで、商品を販売する際は、連邦規則集21巻§101.603)に定められた、1食分当たり、糖質が0.5g未満であることが求められています。
本ヘルスクレームを記載する際は、非う蝕性甘味料が1つ以上含まれていることが必要であるとしています。
上記でまとめた非う蝕性甘味料以外を用いて、本ヘルスクレームを謳った食品を用いる場合は、その甘味料を含有する食品の摂取中または摂取後30分以内のいずれかで、口腔内細菌の発酵によってプラークのpHが5.7未満に下がってはならないとしています4)

d)非う蝕性甘味料とう蝕の任意の情報記載

本稿a) およびb) の情報のうち、非う蝕性甘味料を含む食事とう蝕との関係をまとめたものを含めて、ヘルスクレームに記載することが出来ます。
ヘルスクレームを記載する際は、甘味料を発酵させることができる口腔内細菌の存在、発酵性糖質が歯と接触している時間の長さ、フッ化物への暴露不足、個人の感受性、社会経済的および文化的要因、歯のエナメル質、唾液、プラークの特徴等、う蝕の発症の危険因子を特定し、記載することが出来るとしています。
ヘルスクレームでは、口腔内衛生と適切な歯科治療が歯科疾患のリスクを減らすのに役立つ可能性があることを記載することが出来るとしています。
ヘルスクレームには、非う蝕性甘味料に記載されている物質が甘味料として機能することを示している場合があります。
最後に、本ヘルスクレームを謳った食品のラベルや表示の例がまとめられていました。

推奨されるヘルスクレームの記載例

  • 食事間のスナックとして糖質やでんぷんを多く含む食品を頻繁に食べると、虫歯を促進する可能性があります。この食品を甘くするために使用される糖アルコールは、う蝕のリスクを減らす可能性があります。
  • 糖質やでんぷんを多く含む食品を頻繁に食事の合間に摂取すると、虫歯が促進されます。「○○ (具体的な非う蝕性甘味料名)」の糖アルコールは虫歯を促進しません。
  • 食事間のスナックとして糖質やでんぷんを多く含む食品を頻繁に食べると、虫歯を促進する可能性があります。「○○」は、他の糖質とは異なり、う蝕のリスクを減らす可能性があります。
  • 糖質やでんぷんを多く含む食品を頻繁に食事の合間に摂取すると、虫歯が促進されます。「○○」は、他の糖質とは異なり、虫歯を促進しません。
  • 食事間のスナックとして糖質やでんぷんを多く含む食品を頻繁に食べると、虫歯を促進する可能性があります。この食品を甘くするために使用される甘味成分であるスクラロースは、砂糖とは異なり、虫歯を促進しません。

小さいパッケージの場合のヘルスクレームの記載例

  • 虫歯を促進しません
  • 虫歯のリスクの減らすことが出来ます。
  • 「○○」は虫歯を促進しません。
  • 「○○」は虫歯のリスクを減らすかもしれません。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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