1 効果修飾因子とは

食品の機能性にどのような反応を示すかは、人によって異なります。効果がある人もいれば、ほとんど効果が得られない人もいます。この反応性の差異は、人口統計学属性、遺伝的特徴、病歴、健康状態などの個人の特性や、生活環境などによって生じます。一般的には、個人の特性を患者要因 (patient factor) 、生活環境などを環境要因 (environmental factor) と分類することができ、これらの要因は、介入効果に影響を及ぼす可能性があります。一般に、状況によって介入効果が異なる生物学的現象を、効果修飾因子 (effect modification) と呼び、効果修飾を引き起こす要因を効果修飾因子 (effect modifier) と呼びます。

2 効果修飾因子の検討

食品の機能性ごと、さらには評価項目によっても、実際には非常に多くの効果修飾因子が存在する可能性があります。しかし、些細な影響しか及ぼさない因子を検討することは、現実的ではないし実用性も低いです。最も興味のある因子は、人によって反応が異なることをよく説明でき、かつ世の中で広く使用されるようになったときに、利用可能な効果修飾因子です。効果修飾因子を検討するにあたり候補となるのは、患者要因としては年齢、性別、体格、肝機能など、環境要因としては、食事の影響などがあげれられます。これらの要因によって集団をサブグループに分け、介入効果の違いを検討する方法がよく用いられます。

3 効果修飾因子の適用場面

効果修飾因子が明らかになると、臨床試験に大きな恩恵を与えます。研究計画の例としては、過去の試験などから効果修飾因子であることを支持するエビデンスがある場合に、割付時に層別因子として用いる、主要な解析において共変量として統計モデルに含めるなどがあげられます。また、効果修飾因子によって特徴づけられる試験参加者個人の介入効果の予測に役立てることもできます。これを可能にするのが、モデルの精緻化です。試験参加者の背景や遺伝情報など、個人の特徴に直結する効果修飾因子がモデルに組み込まれることによって、個々の試験参加者の介入効果を定量化することができます。
一般に、統計モデルは、介入効果などの応答変数 (Y) を、これに影響する介入、試験参加者背景などの説明変数 (X1, X2, …) の関数と誤差で表したものです。

説明変数の関数は平均的な値 (点推定) を与え、誤差は平均的な値のまわりのバラツキを表現しています。誤差は相対的な概念であり、応答変数に影響する要因があったとしても、説明変数としてモデルに組み込まなければ、誤差とみなされます。
効果修飾因子が知られていない場合には、介入のみが説明変数となり、統計モデルは、

となる。このモデルでは、介入以外の要因にかかわらず、介入を受けたかどうかによって値が決まります。試験参加者の背景や生活習慣によって、反応が異なっていても、すべて誤差として扱われしまいます。
効果修飾因子が特定され、これらがモデル化されている場合は、介入に加えて、それら効果修飾因子が説明変数となり、統計モデルは、

となります。fの部分は、その介入を受けた特定のBMI、年齢、バイオマーカーAの情報という3つの効果修飾因子の組み合わせをもつ個人の平均的な値となり、誤差はfでは説明しきれない残りのバラツキとなります。先ほどの式と比べて、誤差からいくつかの要因を分離させることにより、誤差が小さくなり、介入効果を増大させることができます。

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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