1 概要

臨床試験は、治療効果を評価するための医学研究です。これらの試験実施には、労力と費用が掛かるので、1つの試験から可能な限りの情報を抽出するために、試験参加者のサブグループ解析が頻繁に行われます。サブグループ解析は、治療効果の不均一性を評価し、将来の研究に有用な情報を提供することができます。しかし、サブグループ解析は、解析上の課題をもたらし、過大評価や誤解を招く結果を招くことがあります。本稿は、2007年に公開された「Statistics in Medicine – Reporting of Subgroup Analyses in Clinical Trials」の内容に基づき、サブグループ解析の実施と報告に関連する課題をまとめます。

2 多重性

本稿では、「Statistics in Medicine – Reporting of Subgroup Analyses in Clinical Trials」の「Multiplicity (多重性)」についてまとめます。

2.1 多重性を考慮する意義

サブグループ解析を行う際、いくつかのエンドポイントやベースライン特性ごとに解析を行っていくのが一般的です。多重性とは、ある試験において被験食品とプラセボの比較を行うとき、有意水準P<0.05で10回の独立した相互作用の検定のそれぞれで帰無仮説が真である場合、少なくとも1回は偽陽性となる可能性が40%を超えてしまいます。このような多重性に対処するために、慣例的なP<0.05よりも厳しい統計的有意性の基準の使用に基づくいくつかの方法が知られています。よく用いられる補正方法として、ボンフェローニ補正とホルム補正が知られており、多重性を考慮した場合は記載することが望ましいです。また、多重性を考慮しない場合はその記載を記述することが推奨されています。

3 多重性の検定の例

記載例は以下の通りです。

・サブグループ解析として、プラセボまたは〇〇を摂取したことによる、▲▲に対する効果を、●●名の被験者特性について分析した結果、合計XX個のサブグループ分析を行った。また、検定の多重性を考慮するためにP値補正はボンフェローニ補正を行った。

4 参考文献

  •  Wang R, Lagakos SW, Ware JH, Hunter DJ, Drazen JM. Statistics in Medicine – Reporting of Subgroup Analyses in Clinical Trials. The New England Journal of Medicine. 2007; 357: 2189-21948. (PMID: 18032770)

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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