1 概要

臨床試験のデザインや解析は、生物統計家の貢献が不可欠です。統計学的留意事項は原則的にプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿は、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 有害事象

本稿では、「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の「有害事象 (Harms)」についてまとめます。

2.1 記載内容

「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」には有害事象について以下のような記述がなされています。

Harms 30 Sufficient detail on summarizing safety data, eg, information on severity, expectedness, and causality;
details of how adverse events are coded or categorized; how adverse event data will be analyzed,
ie, grade 3/4 only, incidence case analysis, intervention emergent analysis
有害事象 30 安全性データの要約に関する十分な詳細。
例として、重大性、予期されることおよび因果関係に関する情報。
有害事象をどのようにコード化または分類するかの詳細や有害事象データの解析方法。
すなわち、グレード3/4のみ、インシデントケース分析、介入エマージェンシー分析について

2.2 有害事象を記述する

有害事象とは、試験薬との因果関係の有無は問わず、摂取後において試験参加者に生じたすべての好ましくない又は意図しない傷病もしくはその兆候を指します。有害事象の評価として、「有害事象共通用語規準 CTCAE v5.0」がありにこれに基づいてGradeを判別し、コード化することが望ましいです。有害事象の上記の有害事象情報においてグレード3/4のみの場合は死亡、重篤な有害事象が発現ごとに可能な限りの情報を集めることが重要です。
インシデントケース分析、介入エマージェンシー分析の場合、実施した試験の規模と有害事象が発現率に大きく影響されます。詳細な分析が可能なほどの有害事象の症例数がある場合は分析を行う必要があります。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

● 有害事象
1: 有害事象の定義
「有害事象」の定義は〇〇〇〇〇〇〇〇

2: 重篤な有害事象の定義
「重篤な有害事象」とは、有害事象のうち以下のいずれかに該当するものをいう。
1) 〇〇〇〇〇〇〇〇
2) 〇〇〇〇〇〇〇〇
・・・

3: 安全性評価指標に関する評価、記録、解析の方法並びに実施時期
有害事象が発現した場合、研究責任(分担)医師は、研究対象者に対して速やかに適切に処置する。また、当該有害事象名、発現日・転帰日、重篤度、重症度、転帰、本臨床研究薬との因果関係、本臨床研究との因果関係があるか調査する。

4 参考文献

  • Gamble C, Krishan A, Stocken D, Lewis S, Juszczak E, Doré C, Williamson PR, Altman DG, Montgomery A, Lim P, Berlin J, Senn S, Day S, Barbachano Y, Loder E. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318 (23): 2337-43. (PMID: 29260229)
  • 折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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