前回の届出Newsに引き続き、今回もアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administra-tion; FDA) が発行するガイダンスについてご紹介します。今回は、「大豆タンパク質と冠動脈性心疾患」についてお伝えします。

『心血管に対する機能性評価 (血液マーカー)』、『心血管に対する機能性評価 (血管機能)』に関する欧州食品安全機関のガイダンスについては、【第37回届出News: 心血管に対する機能性評価 (血液マーカー)】、【第38回届出News: 心血管に対する機能性評価 (血管機能)】、『飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患』、『水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患』、『ナトリウムと高血圧』、『特定の食品由来の水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患』に関するアメリカ食品医薬品局ガイドラインについては、【第41回届出News: 飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患】、【第46回届出News: 水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患】、【第47回届出News: ナトリウムと高血圧】、【第48回届出News: 特定の食品由来の水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患_水溶性食物繊維の適格な供給源】、【第49回届出News: 特定の食品由来の水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●FDAガイダンス

~大豆タンパク質と冠動脈性心疾患について~1)

a)大豆タンパク質と冠動脈性心疾患の発症リスクとの関係

心血管疾患とは、心臓や血管などの循環器系に対する疾患を意味します。冠動脈性心疾患は、心血管疾患の中で最も深刻な疾患であり、心筋とそれを支える血管の疾患を指します。血中の総コレステロール値と低密度リポタンパク質 (Low Density Lipoprotein; LDL) コレステロール値が高値を示す時、冠動脈性心疾患の発症リスクが高いと述べています。
冠動脈性心疾患の発症リスクが高まるのは、血中総コレステロール値が240 mg/dL (6.21 mmol/L) 以上、またはLDL-コレステロール値が160 mg/dL (4.13 mmol/L) 以上の者と述べています。またアメリカでは、血中総コレステロール値の境界域は、200~239 mg/dL (5.17~6.18 mmol/L)、LDL-コレステロール値は130~159 mg/dL (3.36~4.11 mmol/L) となっています。
冠動脈性心疾患の発症リスクが低い者は、血中総コレステロールおよびLDLコレステロール値が比較的低い傾向にあることが分かっており、脂質、特に飽和脂肪酸とコレステロールの摂取量が少ないだけでなく、食物繊維やその他の成分を含む植物性の食品を比較的多く摂取する食生活を送っている傾向にあります。
これまでの研究では、飽和脂肪酸とコレステロールが少ない食事が冠動脈性心疾患の発症リスクを減らす可能性があるとしています。また、ほかの研究では、飽和脂肪酸とコレステロールが少ない食事に大豆タンパク質を加えることも、冠動脈性心疾患の発症リスクを減らす効果があると示唆しています。

b)大豆タンパク質と冠動脈性心疾患の発症リスクとの関係に対する重要性

冠動脈性心疾患は、他の疾患よりも死亡者数が多いことから、アメリカにおいて大きな問題とされています。そのため、冠動脈性心疾患の危険因子となる症状を早期に治療することは、この問題を解決する方法の1つであるとしています。
アメリカでは、多くの人の飽和脂肪酸の摂取量が推奨値を超えていることが問題になっています。冠動脈性心疾患の発症リスクに関する主要な推奨事項の1つは、1日に摂取する熱量のうち、10%未満を飽和脂肪酸から摂取し、脂肪からの熱量摂取量を平均30%以下にすることであるとしています。また、コレステロールの推奨摂取量は、1日あたり300 mg以下にすることも挙げています。研究の中で、飽和脂肪酸とコレステロールが少ない食事は、血中総コレステロール値とLDLコレステロール値の低下に関連していることが分かっています。大豆タンパク質は、飽和脂肪酸とコレステロールが少ない食事に含まれている場合、血中総コレステロールとLDLコレステロールを下げることに効果があるとしています。

c) 大豆タンパク質と冠動脈性心疾患の発症リスクの要件

商品を販売する際は、連邦規則集21巻§101.142)に定められた要件 (機能性関与成分を含む食品成分の表示の方法、機能性関与成分の適格性および有効性・安全性の表示方法等) を満たすことが求められています。
食事のラベルまたは表示については、以下の条件を踏まえて、記載することが必要であると述べています。

  • A) ヘルスクレームでは、飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、大豆タンパク質を含む食事は、心血管疾患へのリスクを低減させる「可能性がある」または「かもしれない」としていること。
  • B) ヘルスクレームでは、疾患を特定する際に、「心血管疾患」または「冠動脈性心疾患」の用語を使用していること。
  • C) 食材中の物質を特定する際に、「大豆タンパク質」の用語を使用していること。
  • D) 脂肪成分を特定する際に、「飽和脂肪酸」、「コレステロール」という用語を使用していること。
  • E) ヘルスクレームは、飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、大豆タンパク質を含む食事を摂ることによって、冠動脈性心疾患の発症リスクがいかなる程度の減少であったとしても、これらの食品の使用に起因すると説明してはならないこと。
  • F) ヘルスクレームは、飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、大豆タンパク質を含む食品を摂ることによって、冠動脈性心疾患の発症リスクを低下させる唯一の手段であるかのような記載をしてはならないこと。
  • G) ヘルスクレームでは、冠動脈性心疾患の発症リスクを低減するために必要な水溶性食物繊維を含有する食事の1日当たりの摂取量と、その1日当たりの摂取量に対する本ヘルスクレームを謳った食品の1食分の効果について明記すること。冠動脈性心疾患の発症リスクの低下に寄与する大豆タンパク質の摂取量は、1日あたり25 g以上である。

大豆タンパク質の性質について、以下の様にまとめられていました。
大豆タンパク質とは、マメ科植物であるGlycine maxの種子を原料とするとしています。
FDAでは、連邦規則集21巻§101.93)に記載されているように、「Official Methods of Analysis of the AOAC International」の内容に準拠することで、総タンパク質含有量を測定することで、大豆タンパク質が適格であるかを評価するとしています。また、大豆以外のタンパクを含まない食品については、FDAは大豆タンパクの量を総タンパク量と同等とみなす可能性もあるとしています。さらに、大豆以外のタンパク質を含む食品についてFDAでは、総タンパク質含有量で得られた測定値を用いて、食品中の総タンパク質に対する大豆タンパク質の割合から、大豆タンパク質の含有量を計算することが出来るとしています。
FDAでは、栄養素データベースや分析結果、調理法 (recipes or formulations)、原材料の注文書など、メーカーが特定して提供した情報や、あるいは総タンパク質に対する大豆タンパク質の割合を合理的に立証するその他の情報など、食品の製造業者が特定して提供した情報に基づいて計算を行うことも出来るとしています。製造者は、製品が販売されている間、その根拠を保証するのに十分な記録を保持し、書面による要求があれば、これらの記録を適切な規制当局に提供しなければならないとしています。
また、ヘルスクレームを謳うにあたって、本商品は少なくとも大豆タンパク質を6.25 g含むことが必要であるとしています。

本ヘルスクレームを謳った食品は、「低飽和脂肪酸」および「低コレステロール」食品に関する§101.624)の栄養素の含有量の要件を満たさなければならないとしています。
なお、食品中が丸大豆から構成されている、または丸大豆から派生し丸大豆由来の脂肪によって、「低脂肪」の要件を満たすことができない場合を除いて、§101.624)の「低脂肪」の要件を満たすことが求められています。

d) 大豆タンパク質と冠動脈性心疾患への発症リスクの任意の情報記載

ヘルスクレームを記載する際は、冠動脈性心疾患の家族歴、血中総コレステロールおよびLDL-コレステロールの上昇、体重過多、高血圧、喫煙、糖尿病、身体活動の低下も危険因子であることが記載できるとしています。
飽和脂肪酸やコレステロールが少なく、大豆タンパク質を多く含む食事との関連をヘルスクレームに記載する際は、「血中コレステロール」、「血中総コレステロール」、「血中LDL-コレステロール」などの成分を介している旨を記載できると述べています。
先述のa) および b)の情報のうち、飽和脂肪酸やコレステロールと冠動脈性心疾患との関係やその重要性をまとめたものを含めて、ヘルスクレームに記載することができるとしています。
ヘルスクレームは、アメリカ国内の冠動脈性心疾患の患者数に関する情報を含めて記載することが出来るとしていますが、この情報の出所を明らかにしなければならず、農務省 (U.S. Department of Agriculture; USDA) 及び保健福祉省 (Department of Health and Human Services; HHS) が発行する「Dietary Guide-lines for Americans」、国立衛生統計センター (National Center for Health Statistics; NCHS)、国立衛生研究所 (National Institu-tes of Health; NIH) からの最新の情報でなければならないとしています。
ヘルスクレームは、USDAおよびHHSが発行する「Dietary Guidelines for Americans」に準拠していることが求められています。
本ヘルスクレームを謳った食品を販売する際のラベルには、血中総コレステロール値または血中LDLコレステロール値が高い者は、医師に相談し、治療を受けるべきであることを表示しても良いとしています。また、血中総コレステロール値、血中LDL-コレステロール値の高値および基準値を定義している場合、血中コレステロールが高い者は医師に相談し、治療を受けるべきであることをラベルに表示する必要があると記載されています。

推奨されるヘルスクレームの記載例

  • 飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食事の一部として、1日25 gの大豆タンパク質が心血管疾患の発症リスクを減らす可能性があります。[商品名] は●● gの大豆タンパク質の供給に寄与します。
  • 1日25 gの大豆タンパク質を含む飽和脂肪酸とコレステロールの少ない食事は、心血管疾患の発症リスクを減らす可能性があります。[商品名] は●● gの大豆タンパク質の供給に寄与します。

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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