前回の届出Newsに引き続き、今回もアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administra-tion; FDA) が発行するガイダンスについてご紹介します。今回は、「特定の食品由来の水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患_水溶性食物繊維の適格な供給源」についてお伝えします。『心血管に対する機能性評価 (血液マーカー)』、『心血管に対する機能性評価 (血管機能)』に関する欧州食品安全機関のガイダンスについては、【第37回届出News: 心血管に対する機能性評価 (血液マーカー)】、【第38回届出News: 心血管に対する機能性評価 (血管機能)】、『飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患』、『水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患』、『ナトリウムと高血圧』に関するアメリカ食品医薬品局ガイドラインについては、【第41回届出News: 飽和脂肪酸およびコレステロールと冠動脈性心疾患】、【第46回届出News: 水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患】、【第47回届出News: ナトリウムと高血圧】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●FDAガイダンス

~特定の食品由来の水溶性食物繊維と冠動脈性心疾患について~1)

本章は、心血管疾患である冠動脈性心疾患の発症リスクの低下と特定の食品由来の水溶性食物繊維の関係について、述べられています。その中で、本章では、特定の食品由来の水溶性食物繊維 の原料名やその原料から水溶性食物繊維の抽出方法などが記載されています。原料としては、オーツ麦、大麦、サイリウムハスクが挙げられています。その中で、オーツ麦と大麦中の成分は、β-グルカンが水溶性食物繊維として有効であるとしています。オーツ麦のβグルカンの測定方法は、「Official Methods of Analysis of the AOAC International」第16版 (1995年) の方法番号992.28に記載されています2)。また、この方法を用いることは、アメリカの法律である5 USC 552(a)および1 CFR part 51に従えば、問題ないとしています。分析方法に関する文献は、AOAC International (公認分析化学者協会)から入手できるほか、承認された資料はFDAの中央図書館、またはアメリカの国立公文書館 (National Archives and Records Administration: NARA) で調べることができると述べています。日本においては、「Official Methods of Analysis of the AOAC International」が国立国会図書館の東京本館などで閲覧が可能です。
大麦の水溶性食物繊維の測定方法は、「Approved Methods of the American Association of Cereal Chemists」第10版 (2000年) に記載された方法集 (AACC Method 55-99) に定義されているとしています3)。この方法を用いることは、5 USC 552(a)および1 CFR part 51に従えば、問題ないとしています。分析方法に関する文献は、AACC (アメリカ穀物化学者学会) から入手できるほか、食品医薬品局の中央図書館またはNARAで調べることができるとしています。
また、サイリウムハスク中の水溶性食物繊維についての成分名の記載はありませんでしたが、水溶性食物繊維の測定方法は、FDAにおいて、Leeらによって記述された水溶性食物繊維の方法番号991.43をAOACが修正した方法を用いることができれば、水溶性食物繊維の測定に利用することが出来るとしています4)。この方法を用いることも、5 USC 552(a)および1 CFR part 51に従えば、問題ないとしています。文献の取得についても、AOAC International、食品医薬品局の中央図書館、NARAで調べることができるとしています。
それぞれの原料から水溶性食物繊維の生産方法などについて、以下で説明します。

a) オーツ麦について

以降では、先述の規定に従ってオーツ麦を加工した際の生成物名やその製造方法と、冠動脈性心疾患に対するヘルスクレームを謳う上で必要となる食物繊維の含有量を記載しました。

・オーツブラン (オーツ麦のふすま) について

オーツブランは、洗浄した「Oat Groats (オーツ麦のひきわり (脱穀済み)」または「Rolled Oats」と、そこから得られたオーツ麦粉を適切な方法で分別して製造されます。オーツブランの画分は、元の出発原料の50%以下で、少なくとも5.5% (乾燥重量ベース dry weight basis: dwb) の水溶性食物繊維であるβ-グルカンと16% (dwb) の総食物繊維が含有されており、総食物繊維の少なくとも3分の1が水溶性食物繊維であることが求められています。

・Rolled Oatsについて

オートミールとも呼ばれるRolled Oatsは、完全に脱皮させ、洗浄を行った「ひきわり」を用いて、蒸す、剪断、圧延、剥離などの工程を経て製造され、少なくとも4% (dwb) の水溶性食物繊維であるβ-グルカンと、少なくとも10%の総食物繊維を含有していることと示されています。

・オーツ麦の全粒粉について

オーツ麦の全粒粉は、完全に脱皮させ、洗浄を行った「ひきわり」を蒸して粉砕したもので、最終生産物におけるオーツブラン量の著しい減少が低く、少なくとも4% (dwb) の水溶性食物繊維であるβ-グルカンと少なくとも10%の総食物繊維を含有していると示されています。

・Oatrimについて

オーツブランまたはオーツ麦の全粒粉をα-アミラーゼで加水分解した際の水溶性画分であり、これをOatrimとしています。製造は、以下のようにまとめられていました。オーツブランまたはオーツ麦の全粒粉のいずれかのうち、含有されている成分のデンプンをα-アミラーゼで加水分解することで可溶化した後、オーツブランまたはオーツ麦の全粒粉に含有されているタンパク質、脂質、不溶性食物繊維の大部分、および風味や色に関与する不溶性成分を遠心分離することで除去するとしています。Oatrimは、水溶性食物繊維であるβ-グルカンの含有量がオーツ麦に本来含有される量 (10%以上) とほぼ同量含まれていることとしています。

b) 大麦について

以降では、先述の規定に従って大麦を加工した際の生成物名やその製造方法と、冠動脈性心疾患に対するヘルスクレームを謳う上で必要となる食物繊維の含有量などを記載しました。

・大麦の全粒粉と乾式の製粉大麦について

大麦の全粒粉は、水溶性食物繊維であるβ-グルカンが4% (dwb) 以上で、総食物繊維の含有量が10 % (dwb) 以上の脱穀した製品であることとしています。乾式の製粉大麦は、大麦のふすま、押し麦、粗びきした大麦、パール大麦 (精白した大麦)、大麦の粉、大麦ミール、振るい分けられた大麦ミールなどがあり、標準的な乾式の製粉技術を用いて、清潔で正確に脱皮または脱穀された大麦の粒から製造されます。ただし、大麦のふすまおよび振るい分けられた大麦ミールは、水溶性食物繊維であるβ-グルカンの含有量の最低値が5.5%、総食物繊維の最低値が8%とされています。 ただし、水溶性食物繊維であるβ-グルカンの含有量が5.5% (dwb)、総食物繊維の含有量が15% (dwb) 以上の大麦ふすまおよび振るい分けられた大麦ミールは除くとしています。
また、前述した大麦ミール、振るい分けられた大麦ミールについての説明は以下のようにまとめられていました。大麦ミールとは、ふるいにかけられていない大麦をひいたもので、ふすま、胚芽、胚乳を分離するための処理が施されていません。振るい分けされた大麦ミールとは、大麦のひき割りを振るい分けするか、空気分級 (空気を使って、粒体の大きさ毎の分別) によって、製粉によって分離した胚乳細胞壁を富む画分のことであるとしています。

・大麦ベータファイバーについて

大麦ベータファイバーとは、セルラーゼおよびα-アミラーゼで加水分解した大麦の全粒粉をエタノール沈殿させ、得られた水溶性の画分のことです。大麦の全粒粉をセルラーゼおよびα-アミラーゼといった酵素を用いて加水分解し、主に部分的に加水分解されたβ-グルカンと実質的に加水分解されたデンプンを含有する透明な水溶性抽出物を生産する方法で得られると述べています。そして、水溶性であり、部分分解されたβ-グルカンは、遠心分離にかけることで不溶性の物質を除去し、エタノール沈殿を行うことでβ-グルカンとその他の水溶性物質を分離することで、大麦ベータファイバーの素を得ることが出来るとしています。最後に、乾燥、粉砕、振るい分けを行うことで、大麦ベータファイバーを生産すると述べています。また、大麦ベータファイバーの乾燥重量は、水溶性食物繊維であるβ-グルカンの含有量が全体の70%以上であることとしています。

c) サイリウムハスクについて

以降では、本ヘルスクレームにおける、サイリウムハスクの食物繊維の含有量などが記載しました。

・サイリウムシードハスクについて

インドオオバコ (Plantago ovata) の種子の乾燥した種皮 (表皮) から得られるサイリウムハスクは、ブロンドサイリウム、インディアンサイリウム、またはP. indica、P. psylliumとして知られています。サイリウムハスクとして一般的に認知されている、サイリウムシードハスクは、95%以上の純度を有し、タンパク質が3%以下、小さい夾雑物が4.5%以下、大きい夾雑物が0.5%以下であることが必要ですが、いかなる場合も夾雑物の合計が4.9%を超えてはならないとしています。これらの量は、5 USC 552 (a) および1 CFR partに準拠できていれば問題ないとしています。分析方法に関する文献は、U.S. Pharmacopeia (USP; 米国薬局方) の「The National Formulary」 (1995年) に記載されており、米国薬局方協会から入手できるほか、食品医薬品局の中央図書館やNARAでも閲覧できるとしています。

最後に、本ヘルスクレームを謳った食品の性質について、以下のようにまとめられていました。

  • 1.上記の全オーツ麦または大麦含有食品の1つ以上は、食品の通常消費量あたり少なくとも0.75 gの水溶性食物繊維であるβ-グルカンが含まれていること。
  • 2.Oatrimまたは大麦ベータファイバー含有食品は、食品の通常消費量あたり少なくとも0.75 gの水溶性食物繊維であるβ-グルカンが含まれていること。
  • 3.サイリウムハスク及びサイリウム含有食品は、食品の通常摂取量あたり少なくとも1.7 gの水溶性食物繊維が含まれていること。

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【参考文献】
  • 1) Code of Federal Regulations Title 21 §101.81 Health claims: Soluble fiber from certain foods and risk of coronary heart disease (CHD) [Internet]. 2021 [cited 2021 Jun 22]. p. 119–22. Available from: https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=c7e427855f12554dbc292b4c8a7545a0&mc=true&node=pt21.2.101&rgn=div5#se21.2.101_181
  • 2) Cunniff P. Official methods of analysis of AOAC international. 16th ed. USA: AOAC International; 1995.
  • 3) AACC. Approved Methods of the American Association of Cereal Chemists. 10th ed. USA: Cereals & Grains Assn; 2000.
  • 4) Lee SC, Rodriguez F, Storey M, et al. Determination of Soluble and Insoluble Dietary Fiber in Psyllium-Containing Cereal Products. J AOAC Int. 1995;78(3):724–9.

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