1 概要

臨床試験のデザインや解析は、生物統計家の貢献が不可欠です。統計学的留意事項は原則的にプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿は、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 アウトカムの定義

本稿では、「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の「アウトカムの定義 (Outcome definitions)」についてまとめます。

2.1 記載内容

「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」にはアウトカムの定義について以下のような記述がなされています。

Outcome definitions 26a specification of outcomes and timings. If applicable include the order of importance of primary or key secondary end points (eg, order in which they will be tested)
26b specific measurement and units (eg, glucose control, hbA1c [mmol/mol or %])
26c

any calculation or transformation used to derive the outcome (eg, change from baseline, QoL score, time to event, logarithm, etc)

アウトカムの定義 26a アウトカムと時期の列挙。もしあれば、主要エンドポイントあるいは主な副次的エンドポイントの優先順位を含める (検定の順番など)。
26b 測定項目と単位を定める (血糖コントロールでは、hbA1c[mmol/molあるいは%])。
26c アウトカムを導出するのに用いる計算式、あるいは変換 (初期値からの変化量、QOLスコア、イベントまでの時間、対数など)。

2.2 アウトカムを記載する

研究によって得られるアウトカムのうち、最も重要であると考えるものを主要アウトカム、最もではないが明らかにしたいものを副次的アウトカムといいます。主要アウトカムは、試験の質にとって非常に重要であり、そのアウトカムを選択した理由とともに統計解析計画書に事前に明記する必要があります。事前に明記する理由として、割付後に主要アウトカムを定義しようとすると、それによって生じる偏りにより、評価が難しくなるためです。また副次的アウトカムにおいても、同様に統計解析計画書に明記する必要があります。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

●主要アウトカム
 ●1.●●の(実測値または変化量)
●副次的アウトカム
 1.●●
 2.●●
●3.●●

4 参考文献

  • Gamble C, Krishan A, Stocken D, Lewis S, Juszczak E, Doré C, Williamson PR, Altman DG, Montgomery A, Lim P, Berlin J, Senn S, Day S, Barbachano Y, Loder E. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318 (23): 2337-43. (PMID: 29260229)
  • 折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.
  • 厚生労働省. 「臨床試験のための統計的原則」について (平成10年11月30日).
    (https://www.pmda.go.jp/files/000156112.pdf) (2021年12月20日アクセス可能)

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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