シリーズ『おしえて論文作成』では、論文作成における留意点を紹介していきます。
教えて論文作成Part3-2では、パラグラフの構成におけるトピックの展開に着目し、論文作成のポイントをご紹介します。

目次

1.前回のおさらい

前回は「パラグラフの構成を考えよう」の前半としまして、パラグラフにおける重要な情報の置き方についてお話しました。

★前回のコラムは、こちら↓★
https://www.xn--79q34w.com/staff-blog/2022.12.23.1736/

パラグラフとは、日本語でいう段落のことであり、1つのパラグラフで1つの考えを表現するものです。序論や考察などの各セクションの第1パラグラフでは、研究の目的や結果など重要な情報が提示されます。また、文やパラグラフの最初はトピックポジションと呼ばれ、伝えたい内容を最もよく表す要素を置きます。さらに、新規の情報と既知の情報が混在する場合、語順や接続詞を工夫したり、パラグラフの内容や目的に合わせて情報展開パターンを変えたりして、注目してほしい情報を重みづけすることが重要となります。つまり、重要な情報は明快に示し、目立たせるのがポイントです。

今回は、パラグラフ全体を通してのトピックの展開とまとめ方についてお話し致します。

2.トピックセンテンスの示し方

はじめに、トピックセンテンスの示し方についてお話します。

前回、文やパラグラフの最初の「トピックポジション」には、伝えたい内容を最もよく表す要素を置くということをお話ししました。そのとき、内容に具体性が欠けると表現が冗漫になり、読者に注目してもらいにくくなります。そこで、トピックポジションに位置する文であるトピックセンテンスでは、読者の興味をひくために様々なテクニックが使われます。こちらに3つのテクニックを示しました。

<Point~3つのテクニック~>

  • ① 数字や人名を提示することです。
  • ② 付加価値のない平凡な表現を削除し、簡潔にまとめることです。
  • ③ パラグラフに一貫性を持たせるために、パラグラフの締めくくりでは、そのパラグラフの導入部を想起させるセンテンスを用いることです。

このように、トピックセンテンスは具体的に表現することが重要です。

3.センテンスの配列

先ほど、具体的に表現することが重要だとお話ししましたが、センテンスの配置を誤ると、読者が理解しにくくなってしまいます。こちらの例文を見ていただきますと、1文目で、メイントピック (water) から1つ目のサブトピック (pollution) を導入した後、2文目で、2つ目のサブトピック (millions of chemicals) が1つ目のサブトピックを具体的に説明しています。さらに、3文目で3つ目のサブトピック (impact of most of these chemicals) が2つ目のサブトピックを具体的に説明しています。

<Example~徐々に具体的になるように配置する~>

例: The water is a major source of pollution. Millions of chemicals are released into the environment and end up in water. The impact of most of these chemicals on human health is …

このように、1文で与える情報は少量にしながら、コンセプトが徐々に具体的になるようにセンテンスを配置することで、読者が理解しやすい文脈にしていくことが重要です。

4.論理的な情報提示テクニック

続いて、パラグラフ内で論理的に情報を展開するためのテクニックをご紹介致します。その3つのテクニックは、以下の通りです。

<Point~論理的に情報を展開するためのテクニック~>

  • ① 各センテンスがその前のセンテンスから受け取った情報を展開していく
  • ② はじめに、いくつの要素に分かれているのか説明しておくと、より読者に理解しやすくなります。
  • ③ 長くなってしまったパラグラフは適宜分割する

3つ目のテクニックにおいて、分割を検討した方がよい場合として、以下に4つの事例を示しました。

<Example~分割したほうが良い場合の事例~>

  • ① 序数を使って説明する内容が、3センテンス以上になる場合
  • ② ロジックの構築に新しい展開を加える場合
  • ③ 他の論文、研究について述べる場合
  • ④ 方法の構成要素やステップが変わる場合

いずれも、意味のまとまりを考慮し、理解しやすく分割していることがわかります。また論理展開だけでなく、使う表現にも注意を払うことが大事です。以下に、よく使われる表現をまとめました。

典型的な表現 表現の役割
in order to …
to this end, …
目的を述べる
then …
following this, …
afterwards …
時間的関係を述べる
in addition …
another way to …
説明を追加する
due to …
since …
理由を述べる
thus …
therefore …
結果を述べる
on the other hand, …
however, …
主張を強化する 例外や二面性を例証する

他にも様々な表現がありますので、論文を書く際にはご自身で調べてみてください。

5.自分の研究成果の提示とエンディング

最後に、自分の研究成果の示し方とパラグラフのエンディングについてお話します。

自分の研究の重要性や成果は、読者の注意を引き付けるために、パラグラフを改めることが重要です。また、形容詞や接続詞を活用したり、1つのセンテンスに盛り込む情報を2つまでに制限したりすることも有効です。さらに、パラグラフのエンディングは簡潔にすることも重要です。これは、通常、次のパラグラフの始まりでは前のパラグラフの終わりを受け継ぐことから、冗長さを避けるための対策です。このように、パラグラフの構成や接続を工夫し、読みやすい文章を考えることが重要です。

今回は、パラグラフの中での情報の置き方についてお話しました。

次回は、「Part4 長いセンテンスを分割しよう」というテーマでお話しします。