1 概要

ノンパラメトリックな検定の1つであるカイ二乗検定はヒト臨床試験において、よく使われている検定手法です。カイ二乗検定のうち最も基本的かつ広く用いられる方法として、実際の観察数と期待数の差を統合し、その差が生じうる確率としてp値を算出しています。つまり、偶然ではない何らかの要因があることを説明するために「観察された事象の相対的頻度がある頻度分布に従う」という帰無仮説を検定しています。しかし、カイ二乗検定はいくつかの欠点があり、サンプル数が少ない場合や期待度数が小さい場合では不適切となる可能性が高くなることが知られています。その場合に対応するために使用する検定方法として「Fisherの正確確率検定」を紹介します。

2 Cochran’s rule (コクラン・ルール)

カイニ乗検定は頻用される比率の検定方法ですが、カイニ乗検定はいくつかの値の基づくもので、すべての期待値が5未満の場合には不正確になりやすい点に注意が必要になります。これをCochran’s ruleと呼ばれており、「期待数のうち5未満のセルが全体のセルの20%以上ある場合、カイ二乗検定を用いてはならない」というルールです。2×2分割表でのカイ二乗検定では期待数10以上であることが望ましいとされています。また、サンプルサイズが100未満においては不適切な検定方法になりやすいことが知られています。これらの理由からカイ二乗検定ではなく、Fisherの正確確率検定を用いて検定を行うことが推奨されています。

3 Fisherの正確確率検定の概要

Fisherの正確確率検定で使用される分布は二項分布とよく似た超幾何分布 (hypergeometric distribution) と呼ばれる分布になります。この分布を利用して、二項検定と同じように、t値のような検定統計量を用いずに有意確率を直接計算して検定する手法がFisherの正確検定です。

3.1 Fisherの正確確率検定の式

2×2分割表における、Fisherの正確確率検定を求める公式は以下になります。

上記の式の通りFisher正確確率検定の数式には階乗が用いられています。エクセルで計算しようとする場合、コンピューターがオーバーフローしてしまう可能性があるため、解析ソフトを使用して計算することが望ましいとされています。Fisherの正確確率検定の利点として、正確な値が得られること、サンプルサイズが小さい場合や期待度数が5未満である場合においても検定を行うことが出来ることです。以上のことからカイ二乗検定で検定を行うよりもFisherの正確確率検定で検定を行うことが推奨されています。

4 参考文献

  •  荒瀬康司. 論文投稿に際しての統計学的記述の留意点. 人間ドック. 2018; 33: 557-570.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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