1 概要

臨床試験において、分散分析を利用する機会は多いと思います。分散分析の結果を解釈する際、一元配置分散分析であれば、ある1つの要因において、要因の効果 (主効果) が認められるか否かを判断すればいいので単純でありますが、二元配置分散分析の場合は、2つの主効果および、2つの要因の交互作用が判断の基準になります。本稿では、2元配置分散分析の主効果および交互作用の考え方について解説します。

2 主効果

まず、主効果について説明します。例として、血圧の上昇を抑える食品を継続的に摂取した際の試験結果を想定します。そこで下記表のような結果が得られました。群の主効果は、以下の表のA群とB群で、血圧の値が異なるかを検討します。主効果を検討する際、各群の全体の平均値のみを考え、時点の情報は無視します。つまり、上記表の各群の行平均を比較します。その結果が有意差ありと判定された場合に、「群の効果あり」と判断できます。
群の主効果を例に説明しましたが、時点の主効果も同様の考え方で解釈できます。

  時点1の平均値 時点2の平均値 時点3の平均値 行平均
A群 (n = 20) 118.5 115.9 113.1 115.8
B群 (n = 20) 118.6 118.7 119.0 118.8

3 交互作用/h2>

次に交互作用について説明します。交互作用は、要因の組み合わせ (今回の例だと、「群」と「時点」) で生じる効果の大きさの違いに注目します。組み合わせによる効果は、各群の血圧の違いの大きさが、各時点で異なるかを意味します。グラフにしてみると理解しやすいので、グラフを用いて説明します。

交互作用なしの場合

交互作用が認められてない場合を考えます。この時、各群の時点ごとの変化が、各時点で同じであるということになります。時点ごとの変化が同じであれば、各群に違いがあってもなくても問題はありません。グラフで示すと以下のようになります。

このグラフから、時点ごとの変化が群ごとに変わらないことが分かります。

交互作用ありの場合

交互作用が認められるということは、各群の時点ごとの変化が、各時点で異なることを示します。グラフで示すと以下のようになります。

このグラフより、A群では時点ごとに血圧が上昇し、B群では、血圧が時点ごとに減少していることから、各群で逆の効果が表れていることが分かります。グラフで示すと、2つの線がクロスしているときに、交互作用ありと判定されることがあります。

4 臨床試験において、二元配置分散分析を用いる際の注意点

二元配置分散分析は、応用範囲の広い手法であり、様々な場面で用いることができます。ただし、二元配置分散分析を臨床試験に利用する際は、注意しなければならない点があります。それは、要因内の水準はそれぞれ独立であり、お互いに無相関であることを前提にしているからです。
臨床試験では繰り返し測定データが多く、このようなデータは独立ではなくお互いに相関があるのが普通です。そのため、繰り返し測定データに対して時期を要因にした二元配置分散分析を適用するのは不適切です。
そこで、繰り返し測定データの間に相関があると仮定した、反復測定分散分析 (repeated ANOVA) や、繰り返し測定混合効果モデル (MMRM: Mixed effect Models for Repeated Measures) を利用した分散分析などが開発されています。

5 まとめ

今回は、二元配置分散分析における主効果や交互作用について説明しました。結果を解釈する上で、主効果や交互作用は重要ではありますが、全てを検討してしまうと、今度は、多重性の問題に発展します。臨床試験で分散分析を採用する際は、主効果、交互作用を検討するのか、それともある時点の群間比較の結果のみ検討するのかを計画書に定めておくことが重要です。

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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