1 概要

臨床試験のデザインや解析は、生物統計家の貢献が不可欠です。統計学的留意事項は原則的にプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿は、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 追加的解析

本稿では、「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の「追加的解析 (Additional analyses)」についてまとめます。

2.1 記載内容

「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」には追加的解析について以下のような記述がなされています。

Additional analyses 29 Details of any additional statistical analyses required, eg, complier-average causal effect analysis
追加的解析 29 追加的な統計解析の詳細 ―遵守者平均に関する因果推論解析など。

2.2 追加的解析を記載する

臨床試験における主たる結論として研究計画の段階で主要アウトカムおよび副次的アウトカムの定義とそれらの統計解析手法を記述しておく必要があることは以前の回で述べました。しかし、研究結果の報告に際しては主解析の結果だけを提示して考察を行うことは難しいため、得られたデータを二次的に利用して追加的な解析を行うことが多いです。追加的な解析を行う目的として、主解析の結果の解釈の材料を得る、介入効果の特徴づけを行う、新たな仮説を生成するといったものがあります。
こうした目的のためにどのような追加的解析が必要になるか事前に予測し記述しておくことが望ましいとされています。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

平均因果効果分析: 線形的な応答関係を仮定し、操作変数回帰を介入遵守効果の推定に用いる。遵守度が1%増えるごとに介入の効果に増減があるとする推定を示す。

4 参考文献

  • Gamble C, Krishan A, Stocken D, Lewis S, Juszczak E, Doré C, Williamson PR, Altman DG, Montgomery A, Lim P, Berlin J, Senn S, Day S, Barbachano Y, Loder E. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318 (23): 2337-43. (PMID: 29260229)
  • 折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

この記事をPDFでダウンロードする