1 概要

臨床試験のデザインや解析は、生物統計家の貢献が不可欠です。統計学的留意事項は原則的にプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿は、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 中止・追跡

本稿では、「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の「中止・追跡 (Withdrawal/follow-up)」についてまとめます。

2.1 記載内容

「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」には募集について以下のような記述がなされています。

Withdrawal/follow-up 24a Level of withdrawal, eg, from intervention and/or from follow-up
24b Timing of withdrawal/lost to follow-up data
24c Reasons and details of how withdrawal/lost to follow-up data will be presented
中止・追跡 24a 介入時や追跡時などにおける中止の程度。
24b 中止/脱落データの時期。
24c 中止/脱落を提示する方法の詳細、およびその理由。

2.2 中止・追跡を記載する

臨床試験の中止には、無効中止と有効中止があります。
無効中止とは、試験途中に行われる中間解析において介入の効果が確認できず、これ以上試験を継続しても効果が得られる見込みがない場合の試験中止です。研究計画段階で設定した基準に基づき、試験を継続しても望ましい結果が得られない可能性が高いと予測される場合や、介入が試験参加者に有害な可能性があり試験継続に倫理上の問題があると判断された場合、研究代表者や安全性委員会などが試験の無効中止を決定します。食品の臨床試験においても、介入の安全性に問題が無いことを確認するため、試験期間中を通して参加者の生活状況を追跡することが基本となっています。
有効中止とは、途中で介入の有効性が証明された場合、その時点で試験を中止することです。通常、第3相試験では試験の途中で中間解析が行われ、それまでの結果が解析されます。この時点で介入が有効であることが明らかである場合、そこで臨床試験を中止します。早期に中止することで、いち早く多くの消費者がその製品を使えるようにする、試験期間や検査段階を短縮し開発に要するコストを抑える、その臨床試験でプラセボ群に割り当てられた試験参加者にも治験薬が使えるようにする、といった意味合いがありますが、食品の臨床試験においては有効中止の決定基準の設定自体ほぼされておらず、医薬品の開発試験で見られることが多いです。
臨床試験の計画に際しては、上記のような中止を決定する基準、更に中止症例数を集計したり、その理由を分類したりする方法を事前に定めておく必要があります。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

  • ●中止の程度は、「追跡とデータ収集に同意した。」、「デ-タ収集のみに同意した。」、「既に追跡とデータ収集を完了した。」と分類し表にまとめる。
  • ●各試験段階で中止または解析から除外された症例数とその理由はCONSORTで推奨されているフローチャートで表す。
  • ●脱落や中止で追跡が不能になった症例数を、理由とともに介入群ごとに要約する。

4 参考文献

  • Gamble C, Krishan A, Stocken D, Lewis S, Juszczak E, Doré C, Williamson PR, Altman DG, Montgomery A, Lim P, Berlin J, Senn S, Day S, Barbachano Y, Loder E. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318 (23): 2337-43. (PMID: 29260229)
  •  折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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