1 概要

臨床試験のデザインや解析においては生物統計家の貢献が不可欠です。原則的な統計学的留意事項はプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿では、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 遵守とプロトコル逸脱

本稿では、「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の「遵守とプロトコル逸脱 (Adherence and protocol deviations)」についてまとめます。

2.1 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドライン

「臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドライン」には遵守とプロトコル逸脱について以下のような記述がなされています。

Adherence and protocol deviations 19a Definition of adherence to the intervention and how this is assessed including extent of exposure
19b Description of how adherence to the intervention will be presented
19c Definition of protocol deviations for the trial
19d Description of which protocol deviations will be summarized
遵守とプロトコル逸脱 19a 介入への遵守度と、それをどのように評価するかの定義。曝露の程度についても含める
19b 介入への遵守度をどのように提示するかの記述
19c 試験に対するプロトコル逸脱の定義
19d どういったプロトコル逸脱を要約するかの記述

2.2 介入への遵守度の評価と記述

臨床試験においては臨床試験計画を遵守して実施する必要があります。試験の実施・運営を担当する機関は試験参加者に対して遵守事項や、必要な記録の記入などについて十分な説明をし、それらが正しく行われ計画に沿って検査を進行できているか絶えず確認しなければなりません。プロトコルからの逸脱が確認された場合には、それが原因で主要アウトカムに影響が生じないか症例検討会で確認します。組み入れ基準に適した試験参加者集団でのPer Protocol Set解析を予め計画していた場合、逸脱のみられた症例は解析対象から除外されることもあります。
こうした措置を取れるようにするため、計画段階から「どのような条件を満たした、あるいは満たさない症例を逸脱と判定するか」、「最終的な遵守度の報告の際にはどのような値に要約するか」といった点を明確にしておく必要があります。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

  • ●介入への遵守度は、定められた回数試験食品を摂取した試験参加者の割合で評価する。摂取すべき食品の数量は介入日数の4倍とする。本試験においては朝と夕方の一日2回、各2粒ずつ試験食品を摂取する。
  • ●割り振られた介入の75%以上を受けた試験参加者の割合を、ランダム化から検査3の間、検査3から検査4のそれぞれについて表にまとめる。また、群ごとに介入への遵守度の記述統計 (n数、平均値と標準偏差、中央値と四分位数など)を要約する。
  • ●以下に該当するケースは、主要アウトカムに影響を与える可能性がある、プロトコルからの重大な逸脱であると定義する。
    1) 主要アウトカムの評価時期である摂取開始11~12週の期間に救急治療によってロペラミド投与を受けた場合
    2) 主要アウトカムの評価時期である摂取開始11~12週の期間に抗生物質を使用した場合

4 参考文献

  • Gamble C, Krishan A, Stocken D, Lewis S, Juszczak E, Doré C, Williamson PR, Altman DG, Montgomery A, Lim P, Berlin J, Senn S, Day S, Barbachano Y, Loder E. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318 (23): 2337-43. (PMID: 29260229)
  • 折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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