1 概要

臨床試験のデザインや解析は、生物統計家の貢献が不可欠です。統計学的留意事項は原則的にプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿は、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 信頼区間とP値

本稿では、「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の「信頼区間とP値 (Confidence intervals and P values)」についてまとめます。

2.1 記載内容

「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」には信頼区間とP値について以下のような記述がなされています。

Confidence intervals and P values 15 Level of statistical significance
16 Description and rationale for any adjustment for multiplicity and, if so, detailing how the type 1 error is to be controlled
18 Confidence intervals to be reported
信頼区間とP値 15 統計的有意性の水準
16 多重性の調整についての説明とその根拠、調整する場合には第1種エラーをどのように制御するかの詳細
18 報告されるべき信頼区間

2.2 有意水準と多重性の調整

有意水準は、設定した仮説 (帰無仮説) を棄却する基準となる確率であり、一般的に5%に設定されます。しかし、帰無仮説を複数設定 (評価項目を複数設定) した場合や、繰り返し評価を行うなどの場合、少なくとも1つの帰無仮説が棄却される確率は、初期に設定した有意水準よりも高くなってしまいます。これを多重性の問題といい、有意水準を調整しなければなりません。したがって、多重性を回避または減じる方法を利用するべきです。例としては、評価項目が複数ある場合には、その中でも特に重要な評価項目を指定することや、多群比較の場合は、治療間の重要な対比を選択することなどが挙げられます。多重性の調整は常に考慮するべきであり、調整方法の詳細、またはなぜ調整は必要ないと考えるのか、などの説明は統計解析計画書に述べるべきです。

2.3 点推定と区間推定

点推定とは、標本のデータから母集団の平均値を推定することを指します。しかし、データにはバラツキが含まれているため、点推定では母集団の平均値を正確に推定することができません。したがって、ある区間でもって平均値を推定します。それを区間推定といい、信頼区間を用います。このように、推定値は可能な限り信頼区間とともに提示するべきものであることから、計画書にはこれらを求める方法を示す必要があります。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

主要な評価項目は●●の最終評価時点とし、studentのt検定を用いて治療群と対照群を有意水準両側5%で群間比較する。統計量は平均値、標準偏差、95%信頼区間で示す。検定回数は1回であることから、多重性を調整する必要はない。

4 参考文献

  • Gamble C, Krishan A, Stocken D, Lewis S, Juszczak E, Doré C, Williamson PR, Altman DG, Montgomery A, Lim P, Berlin J, Senn S, Day S, Barbachano Y, Loder E. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318 (23): 2337-43. (PMID: 29260229)
  • 折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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