1 概要

臨床試験のデザインや解析においては生物統計家の貢献が不可欠です。原則的な統計学的留意事項はプロトコルに記載しておくことが望ましいとされていますが、統計解析計画 (Statistical Analysis Plan; SAP) の記載に関してはICH E9やSPIRITといった標準的なプロトコル作成のガイドラインの間でも異なっている点が見られ、結果として試験ごとに統一されていないケースが多いというのが現状です。本稿では、2017年に公開された「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」の内容に基づき、臨床試験の統計関連業務に携わる全ての方に向けて統計解析報告書記述のヒントをまとめます。

2 統計学的中間解析と中止基準

本稿は「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」に記述されている、「統計学的中間解析と中止基準」についてまとめます。

2.1 臨床試験のための統計解析書の内容に関するガイドライン

「Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials」には試験の統計学的中間解析と中止基準について以下のように記述がなされています。

Statistical interim analyses and stopping guidance 13a Information on interim analyses specifying what interim analyses will be carried out and listing of time points
13b Any planned adjustment of the significance level due to interim analysis

13c

Details of guidelines for stopping the trial early

統計学的中間解析と中止基準 13a どのような中間解析が実施されるかに関する情報および、時点での一覧を示す。
13b 中間解析による有意水準の調整が予定されている場合

13c

早期試験中止のための指針の詳細

2.2 統計的仮説の設定に基づく臨床試験の統計学的中間解析と中止基準

中間解析に関する情報とは、試験が正式に完了する前に行われる有効性又は安全性に関する試験治療群間の比較を意図したすべての解析を指します。中間解析の回数、方法及び結果が試験の解釈に影響するため、実施するすべての中間解析は前もって慎重に計画し、治験実施計画書に記述する必要があります。また、中間解析では、割付を明らかにしたデータと結果が必要になります。統計解析担当者を除いて、情報が漏洩されない手順により実施し、治験責任医師には試験の継続もしくは中止の決定、または試験手順の変更のみを知らせるのが望ましいです。
有意水準の調整が予定されている場合については、一般に中間解析の回数が増加するほど有意差が出やすいことが知られており、中間解析 (検証的解析) では、このようにして多重性を減じた後の段階でまだ残っている多重性のすべての側面について治験実施計画書において明らかにする必要があります。調整は常に考慮すべきであり、調整方法の詳細、又は調整は必要ないと考えるのかという説明は、統計解析計画書に記載することが推奨されています。
早期試験中止のための指針については、試験を継続すべきか中止すべきかの決定を目的として中間解析を計画する場合、統計的モニタリング計画を指針とする逐次群計画を用いるのが通常となります。このような中間解析の目的は、研究中の試験治療の優越性が疑いなく立証された場合、適切な試験治療の差を示す見込みのないことが判明した場合又は許容できない有害作用が明らかになった場合に試験を早期に中止します。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

●統計的な中間解析は、本研究の主たる目的が達成されたかどうかを判断する目的で●回の中間解析を行う。中間解析は、予定された必要被験者数の半数が登録された時点で行う。ただし、原則として中間解析中も被験者の登録を継続する。研究の主たる目的が達成されたと判断された場合は研究を中止する。

●中間解析を行う場合、研究全体のタイプIエラーを両側5%に保つために、中間解析と最終解析における検定の多重性に対してLan-DeMetsによる調整法 (Lan and DeMets, 1983) を用いる。また、O’Brien-Fleming型のα消費関数 (O’Brien and Fleming, 1979) を用いる。

●データ収集の後に計画された中間解析において、早期終了基準を定義するために、それぞれ0.0□および0.0□のP値を用いるものとする。両側に対照的な範囲を持つ●●●●●●の方法により計算されたものを用いる。

4 参考文献

  • Gamble C, Krishan A, Stocken D; CONSORT Group. Guidelines for the Content of Statistical Analysis Plans in Clinical Trials. JAMA. 2017; 318: 2337-43. (PMID: 29260229)
  • 折笠秀樹, 訳. 臨床試験のための統計解析計画書の内容に関するガイドラインで示された「記載例」の紹介. 薬理と治療. 2018; 46 (4): 641-8.
  • 松井茂之, 宇野一, 小山暢之. 中間解析における頻度論的アプローチ:最近の理論的展開. 計量生物学. 2000; 21: 87-124.
  • 折笠秀樹, 臨床試験における中間評価の必要性. 計量生物学. 2000; 21: 1-25.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

この記事をPDFでダウンロードする