1 概要

臨床試験を適切に評価するためには、完全 (complete),明快 (clear)、透明性の高い (transparent) 情報が必要とされていますが、多くの報告者はそれらの重要な情報について明確 (lucid) に完全に記述できているとは言い難いのが現状です。新たな方法論的エビデンスや蓄積された経験の成果として、臨床試験について適切に報告するための指針となるCONSORT2010声明が発表されています。本稿は、臨床試験の報告に携わるすべての方に向けて報告書記述のヒントをまとめます。

2 補助的解析 (Ancillary analysis)

本稿は、CONSORT2010のチェックリストにある「補助的解析 (Ancillary analysis)」についてまとめます。

2.1 CONSORT2010声明

CONSORT2010声明には統計学的手法について以下のような記述がなされています。

Ancillary analysis

18

Results of any other analyses performed, including subgroup analyses and adjusted analyses, distinguishing pre-specified from exploratory.

補助的解析

18

サブグループ解析や調整解析を含む, 実施した他の解析の結果。 事前に特定された解析と探索的解析を区別する。

2.2 補助的解析を記述する目的

同じデータを複数回解析すると、多重性のリスクが生じます。したがって、研究者はサブグループ解析を大量に行うことを避けるべきです。試験計画書で事前に規定された分析は、データから示唆される分析よりもはるかに信頼性が高いため、研究者はどの分析が事前に規定されたかを報告する必要があります。また、サブグループ解析を実施した場合、研究者はどのサブグループを検討したか、その理由、事前に規定した場合はその数を報告すべきです。サブグループ解析を選択的に報告すると、バイアスがかかる可能性があります。サブグループを評価する際に問題となるのは、サブグループが統計的に有意な結果を示しているかどうかではなく、サブグループの介入効果が互いに有意に異なるかどうかです。これを判断するためには、相互作用の検定が有用でありますが、そのような検定の検出力は通常高くありません。相互作用の正式な評価を行う場合は、P値だけではなく、各サブグループにおける介入効果の推定差 (信頼区間付き) として報告することを推奨します。
ベースライン変数の調整が行われた分析にも同様に推奨されます。調整を行った場合は、未調整と調整済みの両方の分析結果を報告すべきです。研究者は、調整する変数の選択を含め、調整後の分析が計画されていたかどうかを規定する必要があります。試験計画書に、共分散分析を用いて指名されたベースライン変数の調整を行うかどうかを記載することが理想的です。ベースラインで有意に異なるという理由で変数を調整すると、推定介入効果に偏りが生じる可能性が高いです。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

機能関与成分●●の有効性は性別によって異なる可能性が示唆された研究に基づき、男性あるいは女性サブグループを主要なサブグループ解析として規定する。また、飲酒の有無、喫煙の有無に基づいて、二次サブグループ解析を行った。すべてのサブグループ解析には、ベースラインを共変量とした一般線形モデルを使用した。

4 参考文献

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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