1 概要

臨床試験を適切に評価するためには、完全 (complete),明快 (clear),透明性の高い(transparent) 情報が必要とされていますが、多くの報告者はそれらの重要な情報について明確 (lucid) に完全に記述できているとは言い難いのが現状です。新たな方法論的エビデンスや蓄積された経験の成果として、臨床試験について適切に報告するための指針となるCONSORT2010声明が発表されています。本稿は、臨床試験の報告に携わるすべての方に向けて報告書記述のヒントをまとめます。

2 解析された人数

本稿は、CONSORT2010のチェックリストにある「解析された人数 (Number analyzed)」についてまとめます。

2.1 CONSORT2010声明

CONSORT2010声明には解析された人数について以下のような記述がなされています。

Numbers analysed 16
For each group, number of participants (denominator) included in each analysis and whether the analysis was by original assigned groups
解析された人数 16 各群について, 各解析における参加者数(分母), 解析が元の割付け群によるものであるか。

Numbers analysed 16 For each group, number of participants (denominator) included in each analysis and whether the analysis was by original assigned groups
解析された人数 16 各群について, 各解析における参加者数(分母), 解析が元の割付け群によるものであるか。

2.2 各グループの参加者数

各グループの参加者数は、解析に不可欠な要素です。フロー図には、解析された参加者の数が示されていますが、これらの数はアウトカムの測定ごとに異なることが多くなります。そのため、すべての分析においてグループごとの参加者数を示すべきです。また、二値のアウトカム (リスク比やリスク差など) については、分母またはイベント率も報告すべきです。結果を分数で表すことで、無作為の割り付けられた参加者の一部が解析から除外されたかどうかを評価する際にも役立ちます。

2.3 Intension-to-treat (ITT) 解析

参加者が完全な介入を受けていない場合や、不適格な患者が誤って無作為に割り振られた場合、このような問題に対処するために広く推奨されている方法がITT解析です。ITT解析とは、何が起こったかにかかわらず、すべての参加者を当初のグループ割り当てに従って分析することです。しかし、参加者の中には、脱落などにより評価されないことがあるため、この方法は必ずしも簡単に実施できるものではありません。しかし、ITT解析は、参加者の非ランダムな減少に伴うバイアスを避けることができるため、一般的に好まれています。また、ITT解析にかかわらず、Full analysis set (FAS)解析、Per Protocol Set (PPS)解析など、使用した解析の種類を明記する必要があります。加えて、各解析にどの参加者が何人含まれているか明確にする必要があります。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

主解析はintention-to-treatで、無作為に割り付けられたすべての患者を対象とした。●群の●名の患者が追跡調査を受けられなかったため、●●名の患者のデータがintention-to-treat解析に利用できた。●名の患者がプロトコル違反者とみなされた。その結果、●●名の患者がper-protocol解析のために残った。

4 参考文献

  • Schulz KF, Altman DG, Moher D; CONSORT Group. CONSORT 2010 statement: updated guidelines for reporting parallel group randomised trials. BMJ. 2010; 340: c332. (PMID: 20332509)
  • 津谷 喜一郎, 元雄 良治, 中山 健夫, 訳. CONSORT2010声明 ランダム化並行群間比較試験のための最新版ガイドライン. 薬理と治療. 2010; 939-47: (http://www.consort-statement.org/Media/Default/Downloads/Translations/Japanese_jp/Japanese%20CONSORT%20Statement.pdf) (2021年8月19日アクセス可能)
  • 上岡洋晴. 転倒予防の研究分野における介入研究の研究方法論: ランダム化並行群間比較試験を中心として. 日本転倒予防学会誌. 2017: 4 (1); 61-8.

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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