1 概要

臨床試験を適切に評価するためには、完全 (complete),明快 (clear)、透明性の高い (transparent) 情報が必要とされていますが、多くの報告者はそれらの重要な情報について明確 (lucid) に完全に記述できているとは言い難いのが現状です。新たな方法論的エビデンスや蓄積された経験の成果として、臨床試験について適切に報告するための指針となるCONSORT2010声明が発表されています。本稿は、臨床試験の報告に携わるすべての方に向けて報告書記述のヒントをまとめます。

2 ベースライン・データ (Baseline data)

本稿は、CONSORT2010のチェックリストにある「ベースライン・データ (Baseline data)」についてまとめます。

2.1 CONSORT2010声明

CONSORT2010声明には統計学的手法について以下のような記述がなされています。

Baseline data 15 A table showing baseline demographic and clinical characteristics for each group.
ベースライン・データ 15 各群のベースラインにおける人口統計学、臨床的な特徴を示す表

2.2 ベースライン・データを記述する目的

ランダム化試験は、介入に関してのみ異なる参加者のグループを比較することを目的としています。適切なランダム割り当ては選択バイアスを防ぎますが、グループがベースラインで同等であることを保証するものではないことに注意が必要です。ただし、ベースライン特性の違いは、バイアスではなく偶然の結果となります。研究グループは読者が、それらがどれほど類似しているかを評価できるように、重要な人口統計学的および臨床的特徴についてベースラインで比較する必要がありあります。また、実際に含まれた参加者の特性を知ることも重要です。この情報により読者は試験の結果が個々の患者にどの程度関連しているかを判断できます。

3 記載例

記載例は以下の通りです。

  • 人口統計学的及び他の基準値の特性

    人口統計学的及び他の基準値の特性を表●に示す。FAS及び安全性解析対象集団の被験者背景では、●●の平均値はプラセボ群で●●、被験者群で●●であり、群間に不均衡が認められた (P=0.●●●、2標本t検定)が、それ以外の項目について、群間に不均衡は認められなかった。

項目 試験参加者
(n = ●●)
アクティブ群
(n = ●●)
プラセボ群
(n = ●●)
有意確率
男性, n (%) ●● (●●) ●● (●●) ●● (●●) ●.●●
年齢, Mean (SD) ●● (●●) ●● (●●) ●● (●●) ●.●●
BMI, Mean (SD) ●● (●●) ●● (●●) ●● (●●) ●.●●

3.1 ベースラインの人口統計学的および臨床的特性の報告の留意点

ベースライン情報は表にまとめるのが最も効率的です。体重や血圧などの連続変数の場合、データの変動性を平均値とともに報告する必要があります。連続変数は、平均と標準偏差によってグループごとに要約することができます。また、連続データの分布が非対称である場合、中央値と四分位範囲を引用することが推奨されています。注意しなければならないのは、標準誤差や信頼区間は母集団を推測する推測統計であるため、標本のばらつきを説明するには適切ではありません。また、順序付けられたカテゴリの数が少ない変数は連続変数として扱うべきではありません。

4 参考文献

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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