1 概要

ヒト臨床試験 (ヒト試験) を計画する際は、プロトコルを事前に作成する必要があります。特に機能性表示食品の届出を目指したヒト試験は、SPIRIT2013に基づく記述が推奨されています。しかし、プロトコルの作成は、医師をはじめとする多くの専門家の参画が必須であり、敷居が高いと感じる方も多いと思います。本稿は、プロトコルを作成するすべての方に向けてプロトコル作りのヒントをまとめます。

2 ブラインド

本稿は、SPIRIT2013のチェックリストにある「ブラインド」についてまとめます。

2.1 SPIRIT2013声明

SPIRIT2013声明にはブラインドについて以下のような記述がなされています。

Blinding
(masking)
17a Who will be blinded after assignment to interventions (e.g., trial participants, care providers, outcome assessors, data analysts), and how.
17b If blinded, circumstances under which unblinding is permissible, and procedure for revealing a participant’s allocated intervention during the trial.
ブラインディング
(マスキング)
17a 介入に割付け後,誰がブラインド化されるか (たとえば,試験参加者,ケアプ口バイダ,アウトカム評価者,データ解析者)。そしてどのようにか。
17b ブラインド化される場合,試験中にブラインド解除 (unblinding) が許容される状況,および参加者へ割振られた介入を明かす手続き。

2.2 盲検化される対象及び非盲検化の対象者

  実施施設 研究グループ 第三者機関
盲検
  • 試験参加者
  • 医師
  • 試験協力者
  • 実施責任者
  • モニタリング担当者
  • データマネジメント担当者
  • 統計解析担当者などの研究グループに属する者 (CROを含む)
 
非盲検    
  • キーコード管理者
  • 登録センター
  • 試験食品管理者
  • データ・モニタリング委員会

上記は標準的な二重盲検デザインとなっており、第三者機関が盲検化情報を保有するため、実施施設や研究グループに情報が漏洩しないように手順書を整備し盲検性の維持に努める必要があります。
二重盲検は、試験で得られた結果を担保するためにも重要な要因であるため、適切な実施体制が整備されているかどうかをしっかり確認することが重要となります。

2.3 盲検化の解除が許容される場合と参加者へ割振られた介入を開示する手続き

盲検化を解除する場合: 有害事象が発生した場合

有害事象と認められる症状が発現した場合、試験責任医師は直ちに必要かつ適切な処置を行うと共に、当該試験参加者の試験継続の可否及びエマージェンシーキーの開錠の可否を判断します。また、試験責任医師は、有害事象と試験食品との関連性について評価を行い、文書にて報告するものとなります。

開示の手続き: 全試験が終了した場合

全試験終了後に主宰者が割付責任者に開示を依頼し受け取ります。その後、主宰者は受託臨床試験機関に試験食品の識別番号の内容を明かします。

3 記載例

盲検化の記載例は以下の通りです。

盲検対象及び非盲検対象

介入の性質上、被験者や治験責任医師などは割付を盲検化することはできないが、試験中に被験者の割付を開示しないこと。多くのグループが盲検化対象者は試験参加者、医療従事者、臨床試験参加者、データマネジメント、結果評価者または委員会、データ解析者、および原稿執筆者である。割付管理者及びデータモニタリング委員会は非盲検とする。
研究チーム以外の作業者がデータを別々のデータシートに入力し、研究者らは割付に関する情報にアクセスすることなくデータを分析することが可能となる。

盲検化を解除しなければならない状況

臨床試験の質と正当性を維持するために割付の解除は治験責任医師が解除に相当すると判断した場合のみ行う。盲検化解除において治験責任医師は可能な限り盲検化を維持することが推奨される。割付は被験者やほかの試験関係者に開示してはならない。治験責任医師はCRF(症例報告書)に報告すること。盲検化の解除は必ずしも試験の中止の理由としてはならない。

また、プロトコルには外観の類似性、盲検化を解除するタイミング、盲検化のための割付の保管方法を記載することが推奨されています

4 参考文献

  • Chan AW, Tetzlaff JM, Altman DG, Laupacis A, Gøtzsche PC, Krleža-Jerić K, Hróbjartsson A, Mann H, Dickersin K, Berlin JA, Doré CJ, Parulekar WR, Summerskill WS, Groves T, Schulz KF, Sox HC, Rockhold FW, Rennie D, Moher D. SPIRIT 2013 statement: defining standard protocol items for clinical trials. Ann Intern Med. 2013;158 (3): 200-7. (PMID: 23295957)
  • Chan AW, Tetzlaff JM, Gøtzsche PC, Altman DG, Mann H, Berlin JA, Dickersin K, Hróbjartsson A, Schulz KF, Parulekar WR, Krleza-Jeric K, Laupacis A, Moher D. SPIRIT 2013 explanation and elaboration: guidance for protocols of clinical trials. BMJ. 2013; 346: e7586. (PMID: 23303884)
  • Statistical Principles For Clinical Trials (臨床試験のために統計的原則) 

ヒト臨床試験 (ヒト試験) で得られる結果は、様々な誤差を含んでいます。この誤差を小さくすることで介入効果を増大させることができます。オルトメディコは、多分野の専門家を有するため、様々なアプローチにより誤差を最小化する試験運営が可能です。引き続き、皆様にご満足いただけるような高品質なヒト試験を提供させていただきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

この記事をPDFでダウンロードする