前回の届出Newsに引き続き、今回もカナダ保健健康製品食品局が、申請された健康食品のヘルスクレームに対して適切な科学的根拠があるとした理由等について、ご紹介させていただきます。

今回は、その中で「無糖チューインガム (糖アルコール含有) によるう蝕のリスク低下に関する科学的根拠」についてお伝えします。
欧州食品安全機関のガイダンスの「口腔に関する機能性評価」については【第21回届出News】、機能性表示食品制度の「口腔内環境を良好に保つ」については【第30回届出News】、アメリカ食品医薬品局のガイドラインの「非う蝕性甘味料とう蝕」については【第42回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

無糖チューインガム (糖アルコール含有) によるう蝕のリスク低下に関する科学的根拠1)

背景

2011年9月、カナダ保健省健康製品食品局は、無糖チューインガム (糖アルコール含有) とう蝕のリスク低下に関するヘルスクレームの申請を受理しました。カナダ保健省では「Guidance Document for Preparing a Submission for Food Health Claims」2) など、健康食品の販売を支援するためのガイダンスを発刊しており、無糖チューインガム (糖アルコール含有) とう蝕のリスク低下に関するヘルスクレームの科学的根拠の妥当性は、上記のガイダンスを基に評価したと述べています。
カナダ保健省は天然の健康食品と通常の食品の分類原則が明確化されたことに基づいて、疾患リスクの低減や治療を謳った食品の分類を再検討しました。販売される食品が通常の食事の一部として利用されることで疾患リスクの低減や治療の利益が得られる場合、その製品は天然の健康食品に分類されず、規制される可能性があるとしています。

本ヘルスクレームに対する科学的根拠について

申請者は、このヘルクレームを裏付ける12本の研究を提出しました。追加でカナダ保健省健康製品食品局によって調査した結果、さらに3つの研究が見つかり、関連する研究の総数は15本 (糖アルコールを含有する被験食品群は31個) であったと述べています。

科学的根拠として参考にした文献は以下の条件を含んでいたと述べています。

  • ①試験対象者は健常な学童であり、6本の研究 (20個の被験食品群) では、う蝕のリスクが高い者から選抜
  • ②1日の摂取量はスティックタイプのガム1本を2回からペレットタイプのガム2粒を5回
  • ③糖アルコールを含有するチューインガムを被験食品群とした時、その糖アルコールの種類は、キシリトール (11個の被験食品群)、キシリトールとソルビトールの組み合わせ (9個の被験食品群)、ソルビトール (7個の被験食品群)、ソルビトールとマンニトールの組み合わせ (3個の被験食品群)
  • ④糖アルコールの1日の摂取量は1.9~12.4 g
  • ⑤摂取タイミングは、食事やおやつの後であり、噛む時間は5~20分間
  • ⑥研究期間は、2~3年間
  • ⑦無糖チューインガムのう蝕への影響を評価するために、永久歯のうちう蝕を経験した歯面数を測定し、ガムの有無の比較により予防率を算出

全体を通して、無糖チューインガム (糖アルコール含有) の有効性の結果は一致しており、被験食品群の91%がガム無し群よりも、う蝕を改善させる傾向にあり、74%では統計的な有意差が認められたと述べています。これらの結果は質が高い研究に限定したときも同様の結果が得られるとしています。

予防率の中央値は42%であり、被験食品群では、ガム無し群と比較して、試験期間中のう蝕の発生が42%少なかったとことを意味していると述べています。
各糖アルコール (キシリトール、キシリトールとソルビトール、ソルビトール、ソルビトールとマンニトール) を含むガムのサブグループを個別に検討すると、予防率の中央値はそれぞれ63%、49%、13%、8%であったとしています。う蝕のリスクが高い学童を対象とした研究を除外すると、全体の予防率の中央値は42%から13%に減少しましたが、生物学的にはう蝕の発生率が抑えられたと考えられると述べています。
1日あたり糖アルコールを1.9 gを摂取した1つの研究を除くと、糖アルコールの最低摂取量は約2.4 gであり、複数の研究で採用されていたとしています。

カナダ保健省健康製品食品局は、無糖チューインガム (糖アルコール含有) とう蝕のリスク低下に関するヘルクレームを支持する科学的証拠が存在すると結論づけています。

このヘルクレームは、以下の理由から、カナダ人に関連し、適用可能であるとしています。

  • a)う蝕は多くの場合、小児期に発生し始め、成人期まで続く
  • b)う蝕の発生率は、小児よりも成人の方がはるかに高い
  • c)う蝕の発生過程は、成人と小児で同じ

ヘルスクレームの記載について

以下には、ヘルスクレームの記載方法、表示方法などの例を記載しました。

1.主要な記載

●記載例
1日3回、食後に無糖のチューイングガム1枚 (2.7 g) 噛むことで、う蝕のリスクを低下させることができます。

2.追加の記載

  • ●(無糖チューインガム)*は、う蝕 (dental caries/tooth decay/cavities) のリスクを低下/軽減するのに役立ちます。
  • ●(無糖チューインガム)*は、う蝕 (dental caries/tooth decay/cavities) から歯を守るのに役立ちます。

*表示面が小さい単一パッケージのラベルでのみオプションで表示

単一の小型パッケージ上のラベルの場合、追加の記載は、パッケージラベルの1つの箇所に、主要な記載の2倍までの大きさの文字で配置することができるとしています。また、アスタリスクを用いることで、同じパッケージラベルの別の箇所にある主要な記載に消費者を導くことができるとしています。単一のパッケージではない、または一般的に小さいと考えられる広告素材やパッケージラベルの場合、追加の記載は、主要の記載の2倍までの大きさと目立つ文字で、主要な記載に隣接して配置することができるとしています。

ヘルスクレームを有する食品としての状態

本ヘルスクレームが対象とする食品は、以下のような無糖のチューインガムであるとしています。

  • ①基準量および記載サイズの1食あたり、0.8 g以上の糖アルコールを含むこと。
  • ②「糖分を含まない」という条件 (食品医薬品規則のB.01.513) を満たしていること。
  • ③デンプン、デキストリン、モノオリゴ糖、ジオリゴ糖、その他の発酵性炭水化物を合わせて0.25%以下含むか、0.25%以上の発酵性炭水化物を含む場合は、プラーク中のpHを測定して、摂取後30分間の細菌の発酵によってプラークpHが5.7以下にならないこと3)

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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