前回の届出Newsに引き続き、今回もカナダ保健健康製品食品局が、申請された健康食品のヘルスクレームに対して適切な科学的根拠があるとした理由等について、ご紹介させていただきます。 今回は、その中で「野菜と果物による心血管疾患の発症リスクの低下に関する科学的根拠」についてお伝えします。

水溶性食物繊維と心血管疾患リスクについては【第48回届出News】【第49回届出News】、大豆タンパク質と心血管疾患リスクについては【第50回届出News】、植物ステロールと心血管疾患リスクについては【第51回届出News】【第52回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

野菜と果物による心血管疾患の発症リスクの低下に関する科学的根拠について1)

背景

1993年、アメリカ食品医薬品局が野菜と果物による心血管疾患の発症リスクの低下に関するヘルスクレームを受理しました。2006年、カナダ保健省はこのヘルスクレームをカナダで使用する提案を含んだ立場表明を投稿しました。すべての分野の利害関係者は本ヘルスクレームの受理決定を概ね支持しましたが、心血管疾患の発症のリスク低下に関しては科学的根拠に欠けることから野菜または果物のジュースの適格性に疑問視した声もあったと述べています。さらに、2015年6月13日、カナダ保健省は本ヘルスクレームを認める規制改正案を発表しました。この改正案は広く支持されましたが、一部の食品に本ヘルスクレームの適格性が認められないことを疑問視する声もあり、のちに適格性を持つ食品の条件を調整したと述べています。

本ヘルスクレームに対する科学的根拠について

立場表明における提案は、アメリカ食品医薬品局の決定と、アメリカにおいて本ヘルスクレームが認められてから2000年までに公開された科学的根拠の評価に基づいていると述べています。

選定された8本の比較対照試験のうち4本が血中脂質の改善効果を報告し、このうち2本は脂質や血圧が高い被験者を含んでいたと述べています。

選定された13本の前向きコホート研究のうち10本が野菜と果物が冠状動脈性心疾患 (CHD: coronary heart disease) の発症リスクを低下させる効果を示したとしています。大規模かつ質の高い対照研究では、CHD死亡率の減少幅は15〜37%で、野菜と果物の摂取量が1日8人前以上の人は1日3人前以下の人に比べて20%の減少が報告されたと述べています。

2011年、カナダ保健省は2000年から公開された3本のシステマティックレビューを評価し、本ヘルスクレームの科学的根拠が維持されていることを確認したと述べています。2006年に発表されたDauchetらのシステマティックレビュー2)では野菜と果物の摂取量を1日あたり1人前追加するごとにCHDの発症リスクが4%低下すること、2007年に発表されたHeらのシステマティックレビュー3)では野菜と果物の摂取が1日5人前より多い者は3人前より少ない者と比べて、CHDの発症リスクが17%低下することが報告されました。さらに、2009年にはMenteらのシステマティックレビューで、野菜とCHDの発症リスクの低下の因果関係には強い根拠があり、果物とCHDの発症リスクの低下の因果関係には中程度の根拠があると結論付けられました4)

マメ科植物とジャガイモ (または他のでんぷん質の根菜類やヤムイモ、キャッサバ、プランテンのような塊茎類) は、一般的に野菜や果物の摂取量の推定値に含まないとしております。ジャガイモは、一般的に他の野菜と比較して大量に消費され、個別に考慮すると、CHDの発症リスクの低下に関与しないと考えられています。

野菜もしくは果物で作られた調味料、ジャム、粉は摂取量の推定値に含まないとしています。同様にココナッツ、カシューナッツ、アーモンド、ピスタチオ、クルミ、ペカンといった植物学的には果物もしくは果物の種子だが果物の摂取量の推定値に含まないとしています。

トウモロコシは本ヘルスクレームに適切であるとしています。トウモロコシは植物学的には穀類に分類されますが、カナダ食品ガイド (Canada’s food guide)5) では野菜と考えられており、複数の研究において野菜摂取量の推定値に含まれていたと述べています。

カナダ保健省はジュースがCHDの発症リスクを低下させるかどうかを検証した文献を評価しました。8本の比較対照試験のうち3本は、果物ジュースがCHDのバイオマーカーに及ぼす影響を特異的に検証していたと述べています。このうち2本はCHDの発症リスクの低下に効果がないと判断しましたが、もう1本は高コレステロール血症の被験者に対して1日あたり6人前のオレンジジュースを摂取することで、HDLコレステロールの改善や、HDLコレステロールとLDLコレステロールの比率の改善が認められたとしています。しかしながら、このジュースの摂取量はカナダ食品ガイド5)において推奨される健康な摂取量から逸脱していたと述べています。

ジュースは複数の前向きコホート研究において野菜や果物の摂取量の推定値に含まれており、様々な結果が得られています。しかし、野菜や果物の代わりにジュースを摂取することには懸念があり、特に果物ジュースの糖分が懸念されています。果物ジュースは単糖類や二糖類などの遊離糖分が多く含まれ、これらは一般的に制限すべき栄養素として認識されています。一方で、野菜ジュースは糖分が顕著に低いため本ヘルスクレームに適切であるとしています。

以上より、カナダ保健省は野菜や果物による心血管疾患の発症リスクの低下に関して、本ヘルスクレームを支持する科学的根拠が十分に存在すると結論付けています。心血管疾患はカナダの死亡者のうち20%を占めており、2番目に多い死因であることから、本ヘルスクレームがカナダ人に関連して、適応が可能であると述べています。

ヘルスクレームの記載について

カナダの食品医薬法第3条6)は、製品の表示や広告に関して、一般消費者に向けて一覧表A7)に記載されている疾患の治癒、治療、予防に言及することを禁じています。一覧表Aには動脈硬化症が含まれており、最も典型的な心血管疾患であるCHDは動脈硬化症と同義語として使用されることが多いため、規制が改正されるまで心血管疾患に関するヘルスクレームは禁じられると述べています。

2016年12月14日、カナダ保健省は規制改正を発表し、カナダの市場で販売される野菜や果物に心血管疾患に関する下記のヘルスクレームの表示を許可しました。
『野菜や果物が豊富に含まれる健康的な食事は、心血管疾患の発症リスクの低下を助けると考えられています。』

ヘルスクレームを有する食品としての状態

下記の基準が本ヘルスクレームを有するすべての食品に適応されるとしております。

  • i. 生か冷凍か缶詰か乾燥野菜
  • ii. 生か冷凍か缶詰か乾燥果物
  • iii. 野菜ジュースや野菜の飲み物
  • iv. 上記を組み合わせた食品
  • b. 以下のものではなく、かつ、含まない。
    • i. ポテト、ヤムイモ、キャッサバ、プランテン、成熟した豆類およびこれらのジュース
    • ii. マラスキーノチェリー、グラッセフルーツ、砂糖漬けフルーツ、オニオンフレークなどの調味料、付け合わせ、香料として使用された野菜や果物
    • iii. ジャム、ジャムタイプのスプレッド、マーマレード、プレザーブやゼリー
    • iv. オリーブ
    • v. 果物ジュースや果物の飲み物
  • c. アルコール含有量が0.5%以下である。
  • d. 基準量および記載サイズの1食あたりのナトリウムの1日量の15%未満 (基準量が30 gまたは30 mL以下の場合は50 gあたりのナトリウムの1日量の15%未満)。
  • 弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

    【参考文献】

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