前回の届け出Newsに引き続き、今回もカナダ保健健康製品食品局が、申請された健康食品のヘルスクレームに対して適切な科学的根拠があるとした理由等について、ご紹介させていただきます。
今回は、その中で「DHA、EPAによる中性脂肪の低下」についてお伝えします。機能性表示食品の「中性脂肪を抑える」に関する最終製品の届出については【第8回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

●DHA、EPAによる中性脂肪の低下に関する科学的根拠について1)。

背景

2013年11月、カナダ保健省健康製品食品局は、DHA、EPAによる中性脂肪の低下に関するヘルスクレームの申請を受理しました。カナダ保健省では「Guidance Document for Preparing a Submission for Food Health Claims」2)など、健康食品の販売を支援するためのガイダンスを発刊しており、DHA、EPAによる中性脂肪の低下に関するヘルスクレームの科学的根拠の妥当性は、上記のガイダンスを基に評価したと述べています。
2010年、カナダ保健省は天然の健康食品と通常の食品の分類原則が明確化されたことに基づいて、疾患リスクの低減や治療を謳った食品の分類を再検討しました。販売される食品が通常の食事の一部として利用されることで疾患リスクの低減や治療の利益が得られる場合、その製品は天然の健康食品に分類されず、規制される可能性があるとしています。

本ヘルスクレームに対する科学的根拠について

本ヘルスクレームの対象となった食品はDHAまたはEPA、もしくはその両方を含有する食品です。DHAとEPAは長鎖ω-3脂肪酸であり、DHAは6つの二重結合を含む22個の炭素鎖を持ち、EPAは5つの二重結合を含む20個の炭素鎖を持ちます。

DHA/EPAの申請者は、2012年9月までに報告された研究の文献レビューを行っていました。追加でカナダ保健省健康製品食品局によって2014年9月までに報告された研究の調査を実施しています。
その調査からDHA/EPAに関連した108個の被験食品群を含む76本の介入研究と1本の観察研究に関する文献を本ヘルスクレームの科学的根拠としています。介入研究のうち59本は並行群間比較試験 (症例数は15人から274人)で、17本はクロスオーバー試験 (症例数は6人から312人) であり、1本の観察研究では1689人のデータを解析していることが述べられています。

科学的根拠として参考にした文献は以下の条件を含んでいました。

  • ① ランダム化された介入研究か前向き観察研究
  • ② 適切な対照群が設定されている
  • ③ 症例数は5人以上
  • ④ 被験者は一般的な健常者か服薬していない18歳以上の者
  • ⑤ DHA/EPAの1日あたりの摂取量は5 g以下であり、血中の脂質に影響を与えることが知られている他の治療法を併用していない
  • ⑥ 試験期間は4週間以上 (クロスオーバー試験の場合、ウォッシュアウト期間を4週間設けている)
  • ⑦ 空腹時の血中中性脂肪 (TG) 値の変化が認められる
  • ⑧ 統計的な群間有意差が認められる

これらの文献における研究は以下の条件を含んでいました。

  • ① 対象は健常者か薬物治療を行っていない高脂血症の男女
  • ② 被験者の試験開始時の年齢は18歳から85歳
  • ③ ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア、アジア、アフリカで行われた
  • ④ DHA/EPAの摂取量は1日あたり0.013 gから5 g
  • ⑤ 観察研究の追跡期間は4年以上

DHA/EPAは54個の研究でサプリメントとして、10個の研究で栄養強化食品として、14個の研究で魚として摂取されており、サプリメントとしての摂取と魚としての摂取が混在した研究もあったと述べられています。

サプリメントは主にフィッシュオイル、クリルオイル、アザラシオイル、海藻オイルを含むカプセルである一方で、栄養強化食品は牛乳、豆乳、ヨーグルト、チーズ、チーズスプレッド、バター、マーガリン、ショートニング、ビスケット、パン、パンケーキ、マフィン、チョコレート、インスタントオーツ、ディップ、サラダドレッシング、ドライスープミックス、卵、豚肉を含んでおり、魚の種類は、トラウト、ニシン、サーモン、サバ、マグロ、イワシを含んでいたことが述べられています。

考慮されたアウトカムは空腹時の血中TG値でした。DHA/EPAの被験食品群のうち89%において血中TG値が低下する傾向にあり、50%では統計的な有意差が認められたことが報告されています。
栄養強化食品のサブグループにおいてはDHA/EPAの血中TG値を低下させる傾向はわずかに低く (67%)、統計的に有意差が認められた研究の割合が低かったが (25%)、この場合を除き、DHA/EPAが血中TG値を低下させる傾向は摂取方法に依存しないことが述べられています。

大規模な試験 (被験者が30人以上) や、DHA/EPAを1日に1.5 gから2.0 g摂取した研究のみを考慮すると、DHA/EPAによって血中TG値が統計的に有意に低下した研究の割合はそれぞれ被験食品群の82%と88%と高かったことが述べられています。

DHA/EPAの1日あたりの摂取量が1.5 gである大規模な試験の被験食品群の80%以上において、血中TG値の統計的に有意な低下が認められ、2.0 g以上の被験食品群においても同様の結果が得られたと報告しています。
DHA/EPAを1日あたり1.0 gから1.5 g摂取した4つの質が高い大規模な試験の被験食品群では、血中TG値の統計的に有意な低下が認められなかったため、カナダ保健省は1日あたり1.5 gがDHA/EPAの最小の効果的な摂取量としております。

血中TG値が統計的に有意に低下した試験のDHAとEPAの比は0:1から1:0であり、中性脂肪の低下に関するヘルスクレームにおいてはDHAとEPAの比率は確立されていないと述べられています。

血中TG値の20%から50%の低下は「顕著な低下効果」と説明されますが3)、DHA/EPAを1日あたり1.5 g以上摂取した大規模試験の被験食品群における血中TG値の低下の範囲は3%から48%(−1.52 mmol/Lから−0.02 mmol/L) であり、平均は23% (−0.39 mmol/L) であったことを報告しております。この効果はDHA/EPAによる血中TG値の低下作用を調査したシステマティックレビューの報告と一貫しており4,5)、妥当性があるとしております。

観察研究の結果は介入研究の結果と一貫しており、血中TG値が高い人の割合は、一週間に一度も魚を食べない男性より日常的に魚を食べる男性のほうがより低いことを報告しています。

以上より、カナダ保健省はDHA/EPAの摂取による血中TG値の低下作用は一貫性が高く、ヘルスクレームをサポートする科学的根拠が存在すると結論付けております。
2007年から2009年における20歳から79歳のカナダ人の約25%の血中TG値が1.7 mmol/L以上 (空腹時の血中TG値が1.7 mmol/L以上の場合は不健康であり、メタボリックシンドロームの特徴の1つであるとされています) であることを考慮すると、本ヘルスクレームはカナダの成人に関連し、適応可能であるとしております。

ヘルスクレームの記載について

以下には、ヘルスクレームの記載方法、表示方法などの例を記載しました。

1. 主要な記載

●記載内容
(商標名)[食品の名前]の[測定基準と一般的な家庭の尺度からの食事量]がトリグリセリドの減少/低下を助ける効果を示す、(長鎖) ω-3 (脂肪酸)DHA/EPAの1日あたりの量の●%を供給する
●記載例
缶詰のピンクサーモン 85 g (1/2カップ) がトリグリセリドの低下を助ける効果を示すω-3 DHAおよびEPAの1日あたりの量の40%を供給する
主要な記載で言及される「1日あたりの量」は、血中TG値の低下を示した科学的根拠に基づきDHA/EPA 1.5 gであるとしております。1日あたりの一回の食事から得られるDHA/EPAの割合は、5%の倍数となるように四捨五入するべきであるとも述べられています。

2. 追加の記載

「(長鎖) (ω-3) DHAとEPAはトリグリセリドの減少/低下を助ける」
と、主要の記載の2倍までの大きさと目立つ文字で主要の記載の隣に記載することができるとしております。

ヘルスクレームを有する食品としての状態
下記の基準が本ヘルスクレームを有するすべての食品に適応されるとしております。

  • a. DHAとEPAをあわせて少なくとも0.5 g以上含む (以下のどちらかのうち)
  • i. 基準量および規定サイズの1食分あたり
  • ii. 食品が包装食品、栄養補助食品または食事代替品である場合は、記載されたサイズの1食分あたり
  • b. ビタミンかミネラル栄養物の推奨栄養摂取重量の少なくとも10%を含む (以下のどちらかのうち)
  • i. 基準量および規定サイズの1食分あたり
  • ii. 食品が包装食品、栄養補助食品または食事代替品である場合は、記載されたサイズの1食分あたり
  • c. アルコール含有が0.5%以下
  • d. 以下のどれかを含む
  • i. 基準量および記載サイズの1食あたりのナトリウムの1日量の15%未満 (基準量が30gまたは30mL以下の場合は50gあたりのナトリウムの1日量の15%未満)
  • ii. 食品が栄養サプリメントか食事代替品である場合、記載サイズの1食あたりのナトリウムの1日量の15%未満
  • iii. 食品が包装食品である場合記載サイズの1食あたりのナトリウムの1日量の25%未満
  • e. 以下のどちらかを含む
  • i. 基準量および記載サイズの1食あたりの全糖分の15 g未満
  • ii. 食品が包装食品、栄養補助食品または食事代替品である場合は、記載されたサイズの1食分あたりの全糖分の15 g未満
  • f. カナダ保健省が摂取制限を推奨する魚ではない (水銀濃度に起因するものとして、生鮮・冷凍のマグロ、サメ、メカジキ、エスコラ、カジキ、オレンジルーギー、ビンナガマグロの缶詰などが挙げられる)

広告表示とラベルについて

最後に、広告表示とラベルに関して求められる要件を以下に記載します。

  • 1. 上述の記載またはヘルスクレームが、製品の製造者によってもしくは製造者の指示によって包装食品の広告表示上またはラベル上に記載される場合、栄養成分表示にはω-3とω-6多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸の含有量を記載しなければならない
  • 2. 上述の記載またはヘルスクレームが、製品の製造者もしくは製造者の指示以外によって作られた包装食品の広告表示上に記載される場合、もしくは包装食品ではない食品の広告表示上またはラベル上に記載される場合、広告表示やラベルには規定されたサイズの1食分あたりのω-3とω-6多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸の量を記載しなければいけない

弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

【参考文献】

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