前回まで、欧州食品安全機関 (European Food Safety Authority; EFSA) が発行するガイダンス内容について、ご紹介させていただきました。しかし、EFSA以外にも、世界の様々な国で健康食品に機能性を表示し、販売するためのガイドラインやガイダンスが存在します。そこで、今回からアメリカ食品医薬品局 (Food and Drug Administration; FDA) が発行するガイダンス内容についてご紹介させて頂きます。
今回は、その中でも「カルシウム、ビタミンDと骨粗鬆症」についてお伝えします。機能性表示食品の「骨代謝の促進」に関する最終製品の届出については【第10回届出News】、EFSAの「骨に対する機能性評価」に関するガイダンス内容は【第17回届出News】にてご紹介しておりますので、是非ご覧ください。
●FDAガイダンス
~カルシウム、ビタミンD、骨粗鬆症について~1)
a) カルシウム、ビタミンD、骨粗鬆症の関係について
カルシウムまたはカルシウムとビタミンDの摂取量が不足すると、ピーク骨量が低下するため、骨粗鬆症発症の危険因子の1つとして認識されています。ピーク骨量とは、骨が成熟した際の骨の総量のことで、歳をとった時に骨粗鬆症やそれに伴う骨折のリスクに最も大きく影響すると専門家は考えています。骨量や骨粗鬆症に影響を与えるもう一つの要因は、成熟期以降の骨量減少の度合いであると述べています。
ビタミンDは、カルシウムの正常な吸収に必要であり、また、副甲状腺ホルモン (Parathyroid Hormone; PTH) 濃度が高くなるのを防ぐために必要です。PTHは、骨からのカルシウムの遊離を促し、骨量を低下させる原因となります。
カルシウムは、ビタミンDや他のいくつかの栄養素とともに、正常な骨の組成に寄与する石灰化に必要です。最適な骨の石灰化にはビタミンDも重要ですが、カルシウムの摂取量が十分であれば、ビタミンDはより効果的に作用すると言われています。
カルシウムとビタミンDを十分に摂取することは、人が成長する中で、骨の量を最適化する効果があると考えられています。しかし、ピーク骨量の上限は遺伝的に決まっているとされています。そのため、カルシウムとビタミンDを十分に摂取し、ピーク時の骨量を最適化することで、骨粗鬆症のリスクが低減されることが必要であるとしています。
最後に以下のようにまとめられていました。
①すべての人は年齢とともに骨密度が減少するため、成熟期の骨量が多い人は、骨が容易に折れるようになる臨界量に達するまでに時間がかかる。
②骨格が成熟した後の骨量減少の割合は、高齢になってからの骨量に影響し、骨粗鬆症発症のリスクにも影響する。
③カルシウムとビタミンDの適切な摂取量を維持することは、特に高齢者や閉経後10年間の女性の骨量減少を抑えるために重要であると考えられているが、男性や若い女性にも有意な保護効果が認められている。
b) カルシウムまたはカルシウムとビタミンDの意義
十分なカルシウムの摂取、または十分なカルシウムとビタミンDの摂取は、多因子性骨疾患である骨粗鬆症の発症において唯一認められている危険因子ではありません。
生涯を通じて十分なカルシウムとビタミンDの摂取量を維持することは、最適なピーク時の骨量を達成し、老後の骨粗鬆症のリスクを低減するために必要です。しかし、ビタミンDは、カルシウムの摂取量が十分である場合に最も効果を発揮します。カルシウムの摂取量を増やすことは、食事性ビタミンDとは関係なく、骨の健康に有益な効果をもたらすことが示されています。
商品を販売する際は、連邦規則集21巻
§101.141)に定められた要件 (機能性関与成分を含む食品成分の表示の方法、機能性関与成分の適格性および有効性・安全性の表示方法等) を満たすことが求められています。
また、食品のラベルまたは表示については、以下のような内容を踏まえて、記載することが必要であると述べています。
①骨粗鬆症のリスクを低減するためには、健康的な食生活の中で、生涯を通じて十分なカルシウムの摂取、またはカルシウムの摂取が適切な場合には十分なカルシウムおよびビタミンDの両方の摂取が重要であることを明記したヘルスクレームであることが望まれる。ただし、十分なカルシウムの摂取、または十分なカルシウムとビタミンDの摂取が、骨粗鬆症の発症に対する唯一の認識された危険因子であることを示唆するものではないことを明記することとする。
②ヘルスクレームは、適切な食事によるカルシウムの摂取、または適切な場合には適切な食事によるカルシウムおよびビタミンDの摂取を生涯にわたって維持することにより、骨粗鬆症のリスクがどの程度減少するかを示すものではない。
本ヘルスクレームを謳ううえで、機能性関与成分(カルシウムまたはビタミンD) は「高」レベルで食品中に含有されていることが必要である {「高」レベルとは、食品が慣習的に消費される基準値あたり、Reference Daily Intake (食品中のビタミンなどの栄養素の摂取基準) またはDaily Reference Values (食品中の全脂肪、飽和脂肪、コレステロールなどの摂取基準) の20%以上を含むこと} と述べています。
食品中のカルシウムは、生体内で吸収が出来るものであることが記載されていました。また、カルシウムよりリンが多く含まれてはいけないとしています。
本ヘルスクレームを謳った食品は、その構成成分であるカルシウム塩に適用される米国薬局方 (United States Pharmacopeia; USP) の崩壊試験および溶出試験における基準値を満たさなければならない。ただし、USPの基準が存在しない栄養補助食品は、製品ラベルに記載された使用条件の下で適切な吸収性を示さなければならないとしています。
ヘルスクレームの文章は、上記に示したa)、b)の内容を踏まえ、記載することが出来るとしています。また、身体活動に触れた文言をつけることが出来るとしています。
ヘルスクレームには、米国内の骨粗鬆症または低骨密度の人数 (米国内の特定の部分母集団の人数を含む) に関する情報を含めることができるとしていますが、この情報の出所は明らかにされなければならず、国立衛生統計センター (National Center for Health Statistics)、国立衛生研究所 (National Institutes of Health)、または骨粗鬆症財団 (National Osteoporosis Foundation)からの最新の情報でなければならないとしています。
ヘルスクレーム内の文章は、生涯にわたる十分なカルシウムの摂取の役割、または適切な場合には十分なカルシウムとビタミンDの摂取の役割は、人が成長する中で、ピーク骨量を最適化するというメカニズムを通じて、骨粗鬆症のリスクの低減と関連していることを記載することができるとしています。なお、骨量のピークを最適化するという概念を伝えるために、「良好な骨の健康を構築し、維持する」という表現を使用してもよいと記載されています。また、骨粗鬆症の病歴が家族にある人、閉経後の女性、高齢の男性および女性に対して、カルシウムを十分に摂取すること、または必要に応じてカルシウムとビタミンDを十分に摂取することが、骨粗鬆症のリスク低減につながることを謳うこともできると述べています。
最後に、本ヘルスクレーム (カルシウムと骨粗鬆症、カルシウムおよびビタミンDと骨粗鬆症) を謳った食品のラベルや表示の例がまとめられていました。
- ①カルシウムと骨粗鬆症について
-
- バランスのとれた食事の一部として、生涯を通じて十分なカルシウムを摂取することにより、骨粗鬆症のリスクを低減することができます。
- 健康的な食事の一部としての十分なカルシウムの摂取は、身体活動とともに、将来的に骨粗鬆症のリスクを低減する可能性があります。
- ②カルシウムおよびビタミンDと骨粗鬆症について
-
- バランスのとれた食生活の一環として、生涯を通じて十分なカルシウムおよびビタミンDを摂取することにより、骨粗鬆症のリスクを低減することができます。
- 健康的な食事の一部として十分なカルシウムとビタミンDを摂取し、さらに身体活動を行うことにより、将来的な骨粗鬆症のリスクを低減できる可能性があります。
弊社では、アウトカムの設定に関する不安や悩みなどを出来る限り解消するため、過去の知見や関連する文献を網羅的に調査し、より質の高い臨床試験を目指して適切なプロトコルをご提案します。さらに、消費者庁への届出代行や消費者庁からの問い合わせへの対応など、臨床試験から受理後の関連業務までの「トータルサポート」に取り組んでおりますので、ぜひお気軽にご相談ください。引き続き、皆様にご満足いただけるような情報をお伝えしていきますので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
- 【参考文献】
-
- 1) Code of Federal Regulations Title 21 §101.72 Health claims: calcium, vitamin D, and osteoporosis. [Internet]. [cited 2021 Apr 14]. Available from: http://www.ecfr.gov/cgi-bin/retrieveECFR?gp=1&SID=4bf49f997b04dcacdfbd637db9aa5839&ty=HTML&h=L&mc=true&n=pt21.2.101&r=PART#se21.2.101_172